「パパは次のコンサートで最後にするらしいよ」
「ふーん」
 
最初はそんな感じだった。
 
「次のコンサートで最後」ってフレーズは何回か聞いたことがある。
結局なんやかんやで数十年続けてきた。
高校生から続けてきた大好きな合唱をわざわざ辞める必要もない。
 
でも父のFacebookで今回のコンサートへの想いを綴っていてるのを読んで
「これは行かないと後悔するかも知れない」と思い、
「最後」かも知れないコンサートへ。
 
Geuseppe Verdi「Te Deum」
Geuseppe Verdi 「Requiem」
 
私も個人的に大ファンである指揮者の松村努先生が持つ11の合唱団が一同に介し、300名の合唱。
 
オーケストラと合わさってそれはそれは素晴らしいものだった。
ど迫力の部分も凄かったけど、あの人数で声量を抑えて歌うところは本当に痺れた。
最後かも知れないなんてことは途中で忘れるくらい集中して楽しめた。

 

 

父は会社員をしながら趣味で合唱団をずっと続けてきた。
もとい、父曰く
「歌が本業、会社は趣味」
コンサートの前はお喋りも控えるほどの意識の高さ。
 
でも、そんなに好きならヨレヨレでも死ぬまで歌ったら良いのにとは思う。
 
私だって歌わなかったら、ドロドロの老廃物が溜まってしまう。
絶対に歌は続けた方が良いに決まってるのだ。
 
でも父がFacebookで綴っていたのは
 
「最近は喋り声すら、かすれてきた」
 
75歳。
きっと思うように歌えなくなったのかも知れない。
ましてや、テノール。
 
思うように歌えなくなった時、声が伸びなくなった時、
それでも「歌は最高だなー!」と自分が言えているかは疑問だ。
 
やっぱり父はプロなのだ。
 
ちょっとおセンチな気持ちになりつつ、
父の音楽愛を胸いっぱいに焼き付けて帰宅した。
 
でもまた「今度こそ最後」と言うフレーズを聞きたい。
と娘は思ってしまう。