法務省ヒアリング主題に対する意見発表内容 | 報道関係のブログ

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平成24年7月6日
法務省ヒアリング主題に対する意見発表内容
発表者:宙の会特別参与 土田 猛

○ 法務省ヒアリング主題
「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」に関して
1 心情の意見陳述の対象者の範囲拡大
2 被害者特定事項の秘匿制度
3 被害者等による公判記録の閲覧及び謄写の要件の緩和及び対象者の拡充
4 被害者参加制度
5 損害賠償請求に関し刑事手続きの成果を利用する制度
「第二次犯罪被害者等基本計画」に関して
6 被害者参加人への旅費等の支給に関する検討
7 被害者参加人のための国選弁護制度における資力要件に関する検討

1 「宙の会」意見項目
① 主題「5損害賠償請求に関し刑事手続きの成果を利用する制度」に関連して
○ 殺人事件の損害賠償判決に対する「代執行制度」の確立について
② 主題「4被害者参加制度」及び「7被害者参加人のための国選弁護制度における資力要件に関する検討」に関連して
○ 国選弁護人付与の被告事件に対する被害者参加人のための国選弁護人制度の確立について
③ 主題「第二次犯罪被害者等基本計画」に関連して
○ 公的懸賞金制度の一律化について
④ 主題「第二次犯罪被害者等基本計画」に関連して
○ 犯罪抑止施策に対する実効性の確保について

2 「宙の会」意見発表内容
① 殺人事件の損害賠償判決に対する「代執行制度」の確立について
公訴時効制度が廃止となり、刑事法面における「償い」への制度は確立致しました。
しかし、民事法面における現況は、損害賠償命令制度により手続き面の措置は簡素化されたものの、実情は引き続き個人で闘わなければならい状況にあります。
人を殺しても、捕まらなければ民法第724条の賠償請求権は消滅してしまう。 また、捕まっても、20年過ぎていればという問題と、当事者能力から賠償不可能、又は居直る等意図的に拒むという問題もあり、被害者遺族の苦悩はずっと引きずる余地が改善されてない状況と言えるのではないでしょうか。 
このような状況が法秩序の公正と言えるのでしょうか。これで社会規範は保たれるのでしょうか。やはり、人に迷惑をかけたら「償う」という法制度・社会規範が確立してこそ正義の実現に近づき、抑止効果も表れるのではないでしょうか。

そこで、損害賠償の命令又は判決が出て確定した場合には、国が代執行をして、以後加害者に国が求償権に基づき請求して賠償額を確保する制度を確立して頂きたいと訴えております。あくまでも加害者に償いを求めていくことであり、国家(国民)からの賠償を求めるという趣意ではありません。
そのような制度が確立されれば、被害者遺族は、刑事事件の判決とともに、民事の賠償命令・判決を得た段階で、法的な区切りがつけられるし、他方加害者に対しても「償い」の道筋を明確に示すことになります。
命令・判決の賠償額をどれだけ国が求償できるかは不確定ですが、国でさえ不確定な部分を被害者遺族に、命令・判決のみを示して実効性の担保が限りなく不可能な現況は、あまりにも苦しみの継続を与え、不公平と言えるのではないでしょうか。
国家機関による求償権ならば、資産調査による確保、遺産相続の押さえ、受刑者の作業賞与金等の対応など、長期的かつ継続的に求償可能と思われます。
自動車事故の業務上過失致死事件においては、自賠責法によって強制保険による補償及び任意保険制度の普及によって、限りなく賠償判決の実効性が保たれておりますが、償うべき責任のはるかに高い故意の殺人事件については、自賠責法に代わる法律はなく、また任意保険制度に代わる制度もなく、民事法の当事者主義の観点から、全てが被害者遺族の立証責任に課せられる状況にあります。
我が夫・我が妻、あるいは親、あるいは子供が、なんらの落ち度もないのに殺され、国は判決のみを示し、後は当事者主義ですからと突き放される現況にあります。遺族は同時に殺されたような苦しみを背負い、中には放火によって生活基盤さえ奪われるケースもあります。その原因を作ったのは加害者なのです。ですから加害者に対して責任をしっかりと取らせる制度を確立して頂きたいのです。

さらに、損害賠償判決に対する代執行制度を検討する段階においては、被告事件に対する検討と同時に、被疑事件についても踏み込んだ検討をお願いしたいと存じます。
未解決事件の中には、加害者の人定は不明なるも、証拠上はDNA及び指紋等により加害者が特定されている事件があります。米国ではDNAに人格権を与えて、強姦罪等時効停止の措置をとっているケースもあります。証拠上DNA等により、加害者が特定されている事件については、DNA等に人格権を与え、民事法の消滅時効を踏まえ、20年を経た時期に、遺族の申し出を受け、損害賠償判決による代執行制度を適用することについて是非検討して頂きたいと存じます。

公訴時効が廃止になった今、明らかに加害者特定の証拠のある事件について、20年過ぎて加害者が逮捕された場合には、求償権に基づいて、民事面の「償い」もはたさせることができることとなります。
今回の法律では、損害賠償請求に関して刑事手続の成果を利用する附帯私訴 の制度という画期的な法案となっており、また論議の過程で犯罪被害者給付金の支給額の上限を自賠責保険と同程度までに引き上げようという、犯罪被害給付金の制度の拡充についても前向きな方向で進んでいるように伺えます。
そのこと自体は被害者遺族の思いに寄り添った理念の現れと歓迎致しますが、被害者の立場、遺族の立場に追いやった加害者に対して、「償い」をしっかりと果たさせる法制度の確立を強く望みます。

②  国選弁護人付与の被告事件に対する被害者参加人のための国選弁護人制度の確立について
  今回の法改正により、被害者参加制度が盛り込まれ、「被害者等」として殺人事件被害者遺族自身、そして遺族から委託を受けた弁護士も刑事裁判に参加できることになりました。
刑事手続きにどれだけ関与すべきかについては、未解決事件遺族で大半が構成されている「宙の会」は、先ずは事件解決に向けた対策を願い、次いで同じような思いを持つ遺族を作り出さないための施策を希望するところに終始している段階で、逮捕後の刑事手続きまでの議論には至ってない状況にあります。

しかし、入口のところで加害者が検挙されれば、当然公判対策に入っていくわけですから、素直な思いで先ず願うことは、加害者に国選弁護人が付くならば、当然に被害者にも国選弁護人が付くべきと考えます。
殺人事件の被疑者・被告人には、憲法上も手続法においても、国選弁護人制度がしっかりと定められており、本人が請求しなくても弁護人がいないときや、弁護人がいても出頭しないときは、裁判長は職権で国選弁護人を付さなければならない、というように被告人の権利は守られているというより守ってあげているという手続きになっています。

他方、被害者はどうでしょうか。
憲法第37条3項で「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する」さらに、刑事訴訟法第37条の2では「法定刑が死刑又は無期若しくは長期3年を越える懲役若しくは禁錮に当たる事件について、被疑者に対して拘留状が発せられている場合で、被疑者が貧困その他の事由により私選弁護人を選任することができないときは、裁判官に対し、国選弁護人の選任の請求をすることができる」、加えて第37条の4では「~精神上の障害その他の事由により弁護人の必要性を判断することが困難である疑いがある被疑者について、必要があると認めるときは、裁判官は、職権で国選弁護人を付すことができる」というように定められております。
   この根底には、国家刑罰権の理論から、国が被害者に代わって被害者の権利を行使する基本構造になっていると理解しております。今回の被害者参加制度も、その基本的構造を維持しつつ、これに抵触しない範囲内で被害者参加人等の限定的な訴訟活動が認められていると解釈しております。
国家理念そして法的基本構造を尊重しつつ、なおかつ、裁判員裁判制度の国民判断が大きく取り入れられている現況から、先程読み上げた被告人・被疑者の権利と同等の権利を、国家即ち検察官及び裁判官が代わって行使するところに、被害者遺族自身が権利を行使できるという施策を講じて頂きたいと願います。

   それは、被疑者・被告人に国選弁護人が付くならば、同時に被害者にも国選弁護人が付与される制度、さらに、殺人事件のような「必要的弁護事件」については、被害者が国選弁護人を請求できる制度を確立して頂きたいと願います。
昨今のように死刑になるためには誰でもよかったとか、薬物により心神耗弱状態であったとか、そのような被告人にも国選弁護人が付き、かたや何の落ち度もない被害者側には、弁護人選任について資産の有無や公判参加等について、いくつかの制約があります。
   公判段階及び拘留段階において、被害者自身の存在が失われている中で、被害者の思いを代弁できる、遺族自身の言葉を伝えるためには、弁護人を通して加害者と同等に向き合える制度を確立して頂きたいと願います。
   
③ 公的懸賞金制度の一律化について
公的懸賞金制度すなわち「捜査特別報奨金制度」については、警察庁主管につき、法務省の直接事務ではないと存じますが、被害者遺族の思いを汲み取って頂きたく発表させて頂きます。
公的懸賞金制度については、2007年5月から始められ、「宙の会」の「八王子市スーパー店内殺人事件」及び「柴又3丁目女子大生殺人放火事件」や「世田谷一家4人殺人事件」等も対象となり継続されております。
本件制度は、社会環境の変化の中で、連帯意識の希薄化や通信手段の発展に
よる匿名化の高まり、さらには交通手段の発展による広域化等、捜査の困難性の
中から導入された制度と理解しております。
  事件解決のためには、いわゆる情報をお金で買うという時代と割り切り、また、事件を風化させない・犯罪を許さない・必ず逮捕するという正義感の発露、犯人に対するメッセージとして有効と考えます。
しかしながら、街中の指名手配ポスターを見て、あるポスターは「1000万円」、あるポスターは「300万円」という懸賞金を見て、違和感を覚える国民も少なくないと思われますし、遺族にとってはとても心揺れるところです。
  制度として、設置した趣意そして条件、被害者遺族感情を含めてよくよく検討されている結果とは存じますが、殺人事件被害者の人間の命に「格差評価」はないという思いから致しますと、懸賞金のつかない多くのポスター被害者の遺族は辛い思いもあります。遺族の中には何とか私的懸賞金を準備し、当局に公的懸賞金を付けてもらうため何度もお願いしている方もおります。

  制度の設置理念を考えるならば、一律殺人事件被害者一人に上限1000万円という公的懸賞金のつく制度にはならないのでしょうか。これまでの懸賞金のついた事件の情報による解決率、上限1000万とした場合における事件内容から詳細な基準の設定等を盛り込んだ制度の構築は、決して不可能と言える対策ではないと判断いたしますがいかがでしょうか。そもそも事件情報を提供して報奨金をいただけるという権利は存在してないと思いますので、その判断は、当局の自由裁量の領域と思われ、報奨金の多寡を争う等、一律懸賞金に対する国民側の問題点は少ないのではないでしょうか。
懸賞金のついていない遺族の心情を察して頂き、検討の俎上にぜひ乗せて頂きたいと願います。

④ 犯罪抑止施策に対する実効性の確保について
 一連の犯罪被害者対策については、基本計画に基づいて、その施策については着実に前進が見られると評価しているところです。
特に「宙の会」としては、設立趣意そして活動の第一目標に「公訴時効制度の廃止」を掲げて発足したところ、1年後に廃止法案の成立に至り、正義の力というものを心強く実感として受け止めました。
   中でも、やはり法務省当局の、勉強会それに続く中間発表、そして法案における遡及を盛り込んだ内容、かつ法案成立と同時に施行という流れに、「宙の会」としては法案成立場面の国会に臨んだ報道写真に尽きますが、感動の涙を拭う笑顔の中に、法務省関係者への敬意を心から表したところです。
基本計画そして法案整備、最後は実効性の確保を考えるとき、そこに携わる方々の対処の一点に尽きると思います。基本計画の「今後講じていく施策」の一つ一つが、そこに携わる当局の担当者の真剣さに繋がって行けば、大きく前進することと存じます。
他方、被害者側として、当局の真剣さに向かい合う中、弱者としての権利の主張の一方、被害者側として為せる真剣さも求められていると認識しているところです。
   被害者側にとって、それぞれの思いがある中、自分たちと同じような被害者側に立って欲しくないという願いは、共通認識として皆さん心に含んでおります。

   その点から、「宙の会」としては、会員の多くが「命の大切さを学ぶ教室」において、中学生及び高校生に対し、又は大学ゼミや地域社会において、犯罪抑止のために遺族の思いを伝えております。
   また、ここに出席している小林代表幹事は、放火焼失した自宅敷地を地元消防団の事務所兼資材置場として提供しております。同じく藤堂幹事は、事件現場の木造2階建て住宅の一部を、地元町会の会議・連絡場所として提供しております。
   このように「宙の会」としては、東京の事務局をはじめ、札幌・金沢・名古屋・広島・福岡支部を中心に、また、英国人留学生事件の遺族ビル・ホーカー幹事とも活動内容を伝えながら、それぞれの立場で為せることを果たしつつあります。

   基本計画に網羅された施策に実効性が伴えば、被害者対策は飛躍的に向上することと確信するところです。そのためにも、冒頭申し上げた「殺人事件の損害賠償判決に対する「代執行制度」の確立について」は、先の第174国会法務委員会において、本件に関する質疑の中で、当時千葉国務大臣が次のような答弁しておりますので、ご確認を兼ねて一部引用発表させて頂きます。
  「民事上の損害賠償請求というのは当事者が行う制度になっておりますので、直ちにこれを使うということはなかなかできませんけれども・・・ご指摘がありました損害賠償を国が代わって行うような、こういう課題を含めまして、今後、関係省庁と協議、検討をして参りたいと考えております。
~犯罪被害者の皆さんの経済的、精神的な支援をどうしていくかということはこれからも考えていかなければなりません。基本計画の改定等もございますので、そういう中の議論も含めて、そして国が賠償して求償するというのは本当に一つの大きな考え方だというふうに思いますので、ぜひ今後の検討の重要な材料にさせていただきたいと思います。」

 「宙の会」としては、千葉元国務大臣の言葉を支えとして、引き続き関係省庁の協議・検討を注視しております。
最後に、只今申し上げた意見発表内容にご配意賜ることを心からお願い申し上げ、一方、「宙の会」として、殺人事件の減少に向けて、果たせる犯罪抑止活動の継続を表明して、意見発表とさせて頂きます。
                              以上              

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