僕は部屋を出て

玄関の鍵を開けた



ジミナ…ただいま



おかえり、グク…



僕は思わずジョングクに抱きついた



どうしたんですか?



心配だった…

グクに辛い思いをさせたから



心配しなくていいですよ

僕は大丈夫だから…

あなたといれれば、僕は幸せなんです…



うん…



ジミナはね…何も気にしなくていい

苦しく辛い事でもあなたに関わる事なら

僕は耐えられる

ジミナは僕のそばでずっと笑っていて

幸せな笑顔が見れるなら

それ以上何もいらないから…



うん…



余計な想いは…いらないよ…

僕がただ1人、唯一愛したジミナだけ

この手が触れるところにいてくれるなら

他には何も要らない…



…うん



ジョングクは抱きついている僕を

包み込んでくれた

これほどまでに心穏やかになる瞬間はない

僕にとってもいてくれないとダメな人

僕が僕であるために…必要なんだ…




今日晩御飯何かな…



えっ?今ご飯の話?



だって…ジミナのお母さん

料理上手でしょ?

いつも美味しいご飯食べさせてくれるの

楽しみにしてるんだ



まったく…食べる事ばっかりだねグクは…



ほら、ジミナが笑顔になった

笑ってくれたら嬉しい…

僕の事で悲しい顔して欲しくないんだ…



ありがとう…



ゲームしましょう!



ゲーム?



はい、久しぶりに対決です



グクには勝てないよ



手加減しますよ!



いや、勝負は正々堂々としないと



わかりました、じゃあ本気で



僕たちは駆け足で部屋へ向かった



何も考えずにいよう…

気にし出したらキリがない…

だから…自分の気持ちを大切にすればいいんだ…



ジョングクと共に過ごせる事が

僕にとって何よりも…幸せ…なんだから…



翌日一緒に学校へ向かう

学校が近づいてくると

周りの目を気にして距離をとる

少し後ろを歩き下を向く


離れていく僕に気付き

ジョングクが後ろを振り返る

僕は足を止めた…


ジョングクは僕のところへ戻って来て

手を繋いだ



何も気にしなくていいんだ…

いつも通り、2人でいる時と同じでいい…



ダメだよ…



どうして?



だって…また…言われるよ…



だから何?

言わせとけばいいんだから…

僕は気にしないから





よう!ジョングク

今日は彼女と一緒か?ハハハー



やっぱりお前、男が好きなんだな

イケメンなのにそんな癖があるなんてな

俺らも気をつけようぜ



心ない言葉…

きっと…僕が知らないところで

毎日毎日こんな非難を浴びていたんだ…

そしてこれから先も…



ジミナ…?

大丈夫?



僕の顔を覗き込む



ふふっ



…何?



なんて悲惨な顔してるの?



だって…

あんな事…言われて…



理解されなくていいんだ

あんな奴らに僕たちを理解されたくないし…

だから気にしなくていいんです



…ごめんね…本当に…ごめん…



さぁ、行きますよ




学校に着きジョングクと分かれる



教室に入り自分の席に着く

ジョングクが今、教室でどんな批判を浴びてるのか

僕は考えるだけで

胸が苦しくなった

僕が受験で学校にいない時

あんな風に酷い言葉を

毎日毎日言われていた

なのに僕には何ひとつ言わず

いつも通り優しく笑っていてくれていた

ジョングクの心情を想うと

息すら出来ない…



ジミン…?



えっ、あっおはよう…



さっきから何度も呼んでたのに…

考え事か?



いや、別に何もないよ…



…朝から…大変…だったな…



何が?



本当の事…言えないのは…しんどいな…



えっ?



イケメン…強いよ…

ジミンを守りたい…それが全部出てる



あの…あのね…



ジミンは何も言わなくていい…

今話してるのは…俺の…独り言だ…





恋愛はどんな形でも色々ある

お互いにも周りにも…

逆境があればある程2人の絆は強まる

…だけど…周りが見えなくなる…

周りを気にし過ぎると

お互いの気持ちが見えなくなる…

どうする事が正解かなんて

結局…誰にもわからないものだ…

お前の恋を支えて理解してくれる人が

1人でも増えればいいな…

友達の幸せを俺は…願ってるよ…




…ありがとう…




僕の肩にそっと置かれた優しい手

テヒョン以外にもこうして

僕の味方でいてくれる友達がいる

友の温かみに涙が溢れた

泣いている僕に気付いたクラスメイト達が

騒ついていた



どうした、ジミン

そんなに卒業するのが嫌なのか?

俺と一緒いたいんだな

かわいい奴め!



咄嗟に誤魔化してその場の空気を変えてくれた

すると他の友達たちも反応して

次々僕の元へ来てくれた



そうなのか?

ジミン…卒業しても友達だ

泣くなよ〜



友達たちが僕の周りに集まって来て

慰めてくれている…


3年間僕には本当の友達がいないと

上辺だけだとそう思っていた

こんなにも僕を想い寄り添ってくれる人達が

いた事に今…気付いた

僕は…何も…わかってなかったんだ…

僕はつくづくバカなんだ…





明日はいよいよ卒業式

ここ数日で色んな事を考えた



僕の未来

ジョングクの未来

僕たちが選び歩む道はきっと険しいものだろう

それでもお互いを支え合えるだけの

強い想いはある…

ただ…ジョングクが傷つき

1人で苦しむ姿は見ていられない

そしてきっと…僕には…話さないだろう

苦しい胸の内は…

それがジョングクの優しさだから…

何でも話せる関係って…

結局、相手を想い気遣うから

話す内容を選んでしまう

そして仕舞い込んだ想いを

自分の中に閉じ込めて知らない間に

自分自身を追い込んでしまうんだ…

何でも話せる関係は…成立しない…

だから…僕自身がジョングクのために

してあげられる事…

僕がしてあげなきゃ歩き出せない新しい道を

切り開いてあげないと…いけないんだ…



考え事をしている間に

夜が明けようとしていた



僕たちの人生には

夜が明けていくように

光が差し込む時が来るんだろうか…



僕たちが次に進むために何をしなくちゃいけない?

僕がジョングクにしてあげられる事…



僕がジョングクの背中に翼を付けてあげるよ


………自由に飛べばいい………


それが僕がジョングクにしてあげれる

唯一の救い…だから…




(つづく)



画像お借りしました。ペコリm(_ _)m