ずっとホームにいた僕

駅員さんに声をかけられた



次の電車が最終ですよ



あっ…はい…ありがとうございます



何本の電車が僕の前を通り過ぎたのか…

そんな事もわからないくらい

僕はこの場所に立っていたんだ…



最終列車に乗り最寄駅に着く



力ない足取りで自宅へ向かった



家に着き靴を投げ捨て上がる




ジミンおかえり、遅かったわね…

ジョングク君来てるわよ

部屋で待ってるから…



グク…?



階段を昇り部屋の扉を開ける

僕のベットで横になって眠るジョングクがいた



カバンを下ろしジョングクに近づく


寝ているジョングクの髪を撫でた


手を伸ばせばすぐ届く距離にいるのに

なぜこんなに悲しいのか…

満たされない自分の気持ちは

一体なんなのか…

胸のどこかぽっかりと穴が空いたみたいに…


いつか消えてなくなりそうなジョングクの姿に

抱えきれないほどの寂しさが溢れた



手をそっと離す

するとジョングクが目を覚ました



…ジミナ…おかえり



ただいま…



遅かったね…

ジミナの匂いに安心して

つい寝ちゃった…



待たせてごめん…



僕が勝手に来ただけだし

会えたから…それでいい…



ジョングクは僕に近づき

優しく抱き寄せてくれた…



寒かったでしょ…?

こんなに冷えて…




大丈夫…




僕が暖めてあげるから…




うん…




しばらくの間抱きしめてくれた

ジョングクはいつでも優しい

どんな時でも…ブレてない…

弱虫な僕と違って…




ジミナ…?




何…?




いや…なんでもない




どうしたの…?




なんだか…ジミナがここにいない気がして…

いつもと違う…

魂がここにない…抜け殻みたいだ…




…そんな事…ないよ…

僕は…ちゃんとここにいる…




シュリにね…

今日話したんだ…僕らの事…

気付いてたって言われたよ…

応援するからって…




……応援…………




僕はその言葉に嫌悪感を抱いた

抱きしめてくれていた手を外し

ジョングクと距離をとった


ジョングクは困惑した顔をしていた



ジミナ…?どうかした…?




どうも…しないよ…

風呂入ってくる…




着替えを持って部屋を出た




応援…?

僕に譲れって言った…あのシュリが

不自由で否定的な僕たちの恋を応援…する?



シャワーを浴びながら

ずっとシュリから言われた事を思い出していた



部屋に戻る



何も言わずベットへ入った

椅子に座り携帯を見ていたジョングク

携帯を置き

僕の横へ入ってきた


僕は咄嗟に背中を向けた



ジミナ…



………




ジミナ…こっち向いて




…嫌だ…




お願い…顔…見せて…




…嫌なんだ…




ジョングクは僕の肩を持ち

無理矢理自分の方へ向かせる



キスしたい…




…今日は無理…




キス…したいです…




無理…




僕が嫌いになった…?




…嫌いになんか…ならない…




じゃあ…僕が好き?




好きだよ…めちゃくちゃ…

好き…なのに…




ジョングクが口を塞ぐ様に

キスしてきた…




嬉しいはずなのに…

僕を求めてくれる事が

嬉しくて堪らない…なのに…

涙が出てしまう…




なぜ…泣くの…?




わからない…自分でも…

わからないんだ…




泣かないで…ジミナ…

あなたには笑顔が似合う

笑ってて欲しいんだ…ずっと…




…ごめん…

今は…笑えない…




どうして…?

何かあった…?




何…もない…




やっぱり…心…ここにあらずだ…




えっ?




魂のない…ジミナの体だけ

ここにある…そんな風に感じる…




そんな事…ないよ…




ジョングクが僕の上にのり

パジャマのボタンを外す




やめて…




ジョングクも自分の服も脱ぎ上半身裸になった


僕に覆い被さり肌を合わせる

首筋にキスされた僕は

今まで感じた事のない感覚に襲われる



やめて…グク…




やめないよ…

ジミナの魂を戻すまで…

やめない…




僕の肌に這う様にジョングクの唇が触れる




僕の体温…伝わってますか?




伝わってるよ…




僕が欲しいのは…あなただけです…

僕をちゃんと見てくれるジミナが…欲しい…




…見てるよ…ちゃんと…

愛してる…グクの事…愛してる…




ジョングクは僕の胸に顔を押し付け

力いっぱい抱きしめていた…




僕がいろんな事でショックを受けたのと同じ

ジョングクも…きっとショックで不安だった…

肌を触れ合うだけで…

何か埋めれる気がしたんだ…

いつも強く逞しいジョングクも

たくさん不安になる事がある…

僕だけじゃない…




グク…?




はい…




風邪ひくから服…着て…




…わかりました…

無理に…ごめんなさい…

大切にするって決めてるのに…

嫌がる事…して…ごめんなさい




嫌じゃないよ…

気にしないで…

でも…こういう事は…

グクが大人になってから…

僕は…そう決めてる…




大人になってから…?




そう…20歳になってから…

まだ4年先だね…

それまでは大切にしよう…今の関係を…

グクが20歳になったら一緒に住もう

2人で一緒に…




4年後、一緒に住めるんですか?

僕とジミナで?

ずっと…一緒にいてくれるんですか?




もちろんだよ…

僕こそ、一緒にいてもらえるか心配だ…





何も心配いらない…

僕の夢はジミナの側にずっといる事

それが小さい頃からの絶対に変わらない夢なんだ…




ありがとう…すごく嬉しいよ…

じゃあ…約束…




僕は小指をジョングクに出した

ジョングクははにかんだ笑顔で

僕の小指に自分の小指を絡ませる




約束…




目を合わせて微笑んだ


しばらくそのまま見つめ合っていた


僕の目に映るジョングクは

頼もしく真っ直ぐでぶれない人

こんな僕を愛してくれる大切な人

弱くて怖がりな僕にとって

絶対にいないと困る人

僕の歩く先にたとえ光がなくても

ジョングクとなら手を取り合って

歩んでいける…



この時の僕はそう…想っていたんだ…




一緒にいれる安心感

僕にだけ見せる優しい眼差し

すべてが愛おしく

僕の心に幸福をもたらせてくれていた…




しばらくは…学校であまり会えないかもね




どうして?



また…変な噂されたら…



気にしないでいいです

僕は本当の事知られてもいいんだから…

ジミナは?

本当の事…知られたくない?



…いや…そんな事…ないけど…

せっかくシュリがかばってくれたんだ…

しばらくは…ね…



僕は嫌だ…本当は…嫌…

みんなに勘違いされて…



そうだね…それはわかるよ

でも…グクが学校で上手くやるには

今の状況を保った方がいい…

僕ももうすぐ受験だし、学校にも

あまり行かなくなるから…



ジミナがそう言うなら…

少しの間だけ…我慢します…

受験の邪魔になるといけないし…




受験が終わったらデートしよう




デート…

はい、したいです!

どこがいいかな…




グクとならどこでもいい…

どこだって楽しくなるから…




くしゃっとした顔で笑うジョングク



これほどまでに誰かを幸せにしたいと

幸せであって欲しいと望んだ事はない…

きっとこれからの長い人生で

ジョングクただ1人…

僕が愛すべき人なんだ…




共に過ごす日が増えれば増えるほど

好きが募る

誰にも奪われたくない…

今、ここにある僕たちの幸せは

誰にも壊されたくない…



シュリが僕に言った…

不自由な恋…



その言葉が…僕の脳裏に焼きついていた…




(つづく)




画像お借りしました。ペコリm(_ _)m