宮崎はスギ生産量を、31年連続日本一を取り続けている森林県であり、

多くのバイオマス発電が稼働している。

(ちなみにスギに限らない生産量では北海道が日本一)

 

現状としてもバイオマス発電用の燃料が取り合いの様相を呈しているのであるが、

実は近い将来にもいくつかの発電所が建設される予定となっている。

 

 

以下は、その計画である。

 

①中国木材 日向第2発電所 14,500kW 2023年稼働予定

 中国木材株式会社郷原工場及び日向工場向けバイオマス発電設備の受注について|2019年度|ニュース|タクマ (takuma.co.jp)

 

②日向細島(伊藤忠商事、大阪ガス、他2社)50,000kw 2024年11月稼働予定

 宮崎県日向市におけるバイオマス発電事業について|プレスリリース|伊藤忠商事株式会社 (itochu.co.jp)

 

③都城(元明運送)5,750kW 2023年1月稼働予定

 元明運送、バイオマス発電開始 - 物流ニッポン - 全国の物流情報が集まるポータルサイト (logistics.jp)

 

④川南(九電工、山下商事)5,750kW 2023年稼働予定?

 166cba12355ddc537cc656c3f21c4082_2.pdf (kyudenko.co.jp)

 

 

バイオマス発電はFIT(固定買取価格制度)により、その木材の由来を証明することによって、

・売電価格32円/kWh(未利用材価格)

・売電価格24円/kWh(一般材価格)

 

上記単価が20年間にわたって約束されており、燃料さえ集められれば、発電事業者にとっては、非常に安定的な事業になりえるが、

あくまでも、「燃料(木材など)を集めること」ができればの話であり、現状、木材を集めるのに四苦八苦している事業者が多くなってきているのも事実である。

 

特に売電単価の高い未利用材については需要が高く、

宮崎・鹿児島エリアでは2022年に入ってから@7,000~9,000円/トンが相場であり、過去遡ってみても、最も高騰しているのではないだろうか。

 

 

高騰が続く主な要因として、以下4点が考えられる。

 

①ウッドショックにより、用材価格の高止まりが続いていること。

 ⇒直材については、未だに立米単価@15,000円以上であり、素材生産業者は、

  極力バイオではなく、用材として販売に力を入れている。

 

 

②中国向け原木輸出港が複数存在し、C材価格が一定の水準にあること

 ⇒志布志、日向細島、福島(串間)、油津(日南)、薩摩川内、串木野などの

  既存港に加え、ノーウェアが新たに宮崎港からの輸出を開始しており、

  港着単価も@9,000~10,000円をキープしている。(4m材8cm~)

  台湾行22~28cmや、中国行棺桶用途2.5m材38cm~などの特殊な

  規格については、@10,500~13,000円程度の単価であり、

  ある程度の曲がり材は輸出できるため、バイオに流れる量が抑制されている。

  (ただ輸出材の港着単価水準は、そこまで高いとは言えない。

   上海の在庫が多いこともありピーク時と比較し-2,000円程度である。)

 

 

③畜産用途の敷料となる「のこくず製造用原木」の需要の高まり

 ⇒畜産が盛んなエリアであり、元々製材所の副産物として販売されていた

  のこくずの需要が近年高まっており、端材や背板からの生産でも足りず、

  原木からのこくずを生産する事業者が増加している。

  のこくず製造業者はバイオ材を@7,000円~で購入するケースも多く、

  都城エリアでは、輸出材との競り合いになり、立米単価@9,000円~で

  市場で落札される場合もある。

 

 

④海外から輸入されるPKS(パームヤシ殻)の高騰

 ⇒例えば、鹿児島市七ツ島のバイオマス発電所では、PKSを主な燃料と

  しているが、運賃や原料の高騰、円安の影響により、輸入から国内調達へ

  燃料調達の比重を高めた可能性があり、その影響でバイオ材の

  消費量が増している可能性がある。

  (私自身発電事業者ではないため、あくまでも推測です…。)

  ただし、事実として輸入PKS単価は@15,000円/トン前後で推移していたものが、

  2022年5月から@20,000円/トン前後で推移しており、

  影響は確実に出ているものと思われる。

 

⑥-a 通関統計 月別通関量と価格の推移1 | 一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会 (jwba.or.jp)

 

 

これらの要因が複数重なり、バイオ材が枯渇する事態になっていると考えられる。

 

素材生産業者視点で見ると、バイオ燃料材として売却する場合は、

何も考えずとにかく3mもしくは4mに切れば良いので手間は省けるが、

現状は燃料以外の販売の選択肢が複数あり、少しでも単価を上げたい事業者は、

多少手間を掛けてでも上記のような販売ができないか検討しており、

最終的にバイオ材へ流れる量が減っている。

 

 

ただ、バイオ材の高騰というのは、決して悪い事ばかりではなく、

「最終選択肢が燃料材」というのは、むしろ木材利用の観点から健全とも言え、

木材のカスケード利用がなされている、とも言えるかもしれない。

 

 

今後、建設が予定される発電所について、特に日向細島の伊藤忠および大阪ガスが

主となり建設予定の発電所は、PKSを燃料調達の柱に考えている可能性があり、

今回の円安基調やPKS燃料の高騰は、まさに事業の根幹を揺るがす

事態なのかもしれない。

 

いずれにせよ、発電所の建設が順調に進めば、引き続きC材・D材の高騰は

続くものと考えられる。