ほら手が見えたよ
なんて小さな指なんだろう
はじめて触れたのは人間の温度だったはずなのに
君が生まれた感動にすべてが見えない
君は手から産まれた
そして紅い体を抱く
君は生まれたときから音楽を生む喉を持っていたから
紅を抱く必要はなかったのに
それなのに君は紅い体をいつも大事そうに抱えている
月見る夜も
太陽が降る朝にも
風がやむ昼にも
君には声があるから
本当は必要がないんだ
君はいつも抱えている
自分の心か何かのように
気づいておくれ君の音楽はひとつで十分なんだ
黒と赤と白と君
君に抱かれたそれは
幸せそうにこちらを見て瞬きをしている
君に撫でられ喉もないのに声をあげる
さようなら
君のその温もりが血のないそいつを生かすなら
もう僕は必要ないだろう
そいつは死ぬことはない
君は手から産まれた
紅い体を抱えるために