にいちゃまや、ねえちゃまたちが、まだちっちゃかった頃、
しょーもないことで、誰か一人がかあさまに怒られると、
残りの2人は、やけに良い子になってたんだ。
ぴんと姿勢が正されて、
いそいそと、宿題なんかはじめたりして、
言葉遣いも、丁寧だったりして、
お互い、やさしく気遣いあったりして。
あれは、なんなんだろーなー?
兄弟愛か?
はたまた、連帯責任か?
それとも、怒りが飛び火するのを恐れてるのか?
ずぅ~~っと、不思議な光景だと思っていたんだ。
今日、アタシはその答えを実感することになったんだった。
ととチャンは、テーブルの上に手をかけても、
お皿の上の食べ物を食べない。
お皿の横に、置き忘れられたボールペンを、くわえるんだった。
消しゴムなんかがあると、最高にうれしいらしい。
ととチャンは、戦利品をかあさまにみせびらかして、
追いかけっこをして欲しいんだった。
だからね、かあさまは、トイレに行くときや、洗濯を干しに行くときは、
机の上をチェックしてから、部屋をでる。
イスがひいてあったら、ととチャンが乗らないように、
きっちりテーブルに入れてから、部屋を出る。
今朝は、いそがしくって、ついねえちゃまがイスを引いたままにしてあったのを、
(文房具も、タオルも、ビニールもないからいいか・・・)
って、見過ごしちゃったんだった。
かあさまが、くるりと背中を向けて、歯磨きしていると、
や~~~~な、気配がしたんだな。
ぴちゃぴちゃ・・・ぴちゃぴちゃ・・・・
聞きなれない音。
危機管理が全くなかったかあさまは、
のんびり振り返って、フリーズした。
遠足の翌日で登校時間が繰り下がったにいちゃまに、
とっておいた、肉ジャガの、小どんぶり。
その両脇に、かわいく両手を添えて、
上目遣いでかあさまを、見上げているととチャンがいたんだった。
ととチャンの舌は、いそがしそうに動いてて、
出たり入ったり。
(あ”~~~~~!!!!
こらっ! ノォ~~~!!)
はじかれたように、飛び下りて逃げるととチャン。
(あ~、もうっ!
なぁんにも、ないじゃないっ!
肉じゃがには、玉ねぎも長ネギも入ってたのよっ!)
(テーブルの上のものを、食べるんじゃなぁ~~イッ!!!)
口をつかまれて、目と目をちかづけて、怒られるととチャン。
いつもは、えへらえへらしてるととチャンの、耳がうしろにくっついた。
そりゃ~、そーだろー
すっげ~~怖い顔してるんだもん。かあさま。
すっげ~~迫力で、ととちゃんの尻尾つかんで、捕まえたんだもん。
すっげ~~力で、首根っこ猫の子掴むみたいに、テーブルまで引きずってきたんだもん。
すっげ~~野太い声で、怒鳴ってるんだもん。
(ここで、反省してなさい!)
ととチャンは、30分もステーショニングされたんだった。
周りを、ガーガー掃除機かけられても、
そんもって、ついでに、ととチャンの背中の遊び毛を、
掃除機で、ガーッと吸われても、
ととチャンは、ステーショニングしなくっちゃいけないんだった。
(ジジは、いいのよ。
好きなことしてて、いいのよ。)
って、言われてもね~~
おもわず、付き合っちゃいました。
ととチャンのステーショニング。
なかよく、並んで30分。
ととチャンより完璧な、美しい伏せで。
ととチャンより完璧に、身動き一つせずに。
もしかしたら、何笑ってんのよ!! って、返って火に油を注ぐかもしれないけどね。
あれはね~~
兄弟愛とか、連帯責任とか、自分に飛び火するのを防ぐ防衛本能とか、
そんなんじゃなかったわ。
ひたすらね、
かあさまの勢いにのまれました。
メドウサを見て石になるように、
心が、石になっちゃったんだった。
誰が怒られてるのか、わからなくなっちゃうんだった。
ととチャン、嵐が過ぎ去るまで、静かにしてようね。
逃げ切る自信があったら、とことん逃げてみるのも、いいかもね~~
ところで、ととチャン、初めてのつまみ食いはおいしかった?
あれってさ~~
癖になると、おもわない?
だってね、人間だけがあんなおいしいの食べてるなんて、
不公平よね。
あ~~どうせ、一緒にステーショニングするなら、
アタシも一緒に食べてれば、よかったな・・・・・