「警察です。もう大丈夫ですよ。さぁ、こちらへ」
促されるまま車に乗り込んだ。
「まっすぐ警察署へ行きますね」
車内は沈黙のままだったが、少しだけ安心した記憶がある。
警察署へ到着し、そのまま私達は『保護』された。
そこで初めて私は泣いた。泣きじゃくった。子供達の前でこんなに泣いたのは初めてだった。
いつも強い母を演じてきた。
一番弱い私を子供達にみせた瞬間だった。
警察署の中では既に話が進んでいたようで簡単な事情聴取を受けた後、保護施設からの連絡を待ち、私達は施設へ移された。
警察署の中で耳に聞こえる地元の伝統祭りの声が今でも脳裏に焼き付き離れない。
私にとって、この世で一番嫌いな祭りになったのは過言ではない。
警察署で、なぜスムーズに事が進んだのか後々聞いた話だが、たまたま警察署にいた警察官の方がDV関係の担当だったらしく、全て分かっている方がいたお蔭で『保護』から『移送』まで短時間で行ってくれたそうだ。
その時点で私達は非常にさい先の良いスタートをきれたのです。
移送される車内からの町並みは、それはそれは綺麗で。
雪の平野…晴れ渡る冬の青空が…
もう二度と見ることはないだろうこの景色を見て、ただ涙がこぼれ落ちるだけだった。
『さようなら故郷 さようなら両親 さようなら妹 さようなら友達』
