How dare you! | 爺庵独語

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爺庵の独善的世相漫評

 年末になるといつも流行語大賞なるものが選ばれて、その年の印象的なことばが品評される。俗悪なメディアが選ぶそんなものに関心はないが、一年を振り返ると、印象的に残ることばがあることは確かだ。

 

 今年、爺庵の記憶に極めて強い印象を残したのは、9月23日にニューヨークの国連本部で16歳の少女が発したことば「How dare you!」だ。「よくもそんなことを!」。こんな強いことばを聞いたのは、いったいいつ以来だろう。

 

 このことばは、イデオロギーの色がついたスローガンなどではない。グレタ・トゥーンベリという名前のその少女の、魂のほとばしりだ。われわれもかつて、こうした魂のほとばしるようなことばを持ち合わせていたはずだが、いつの間にか彼女からこのことばを投げかけられるような「大人」になってしまっている。彼女のことばは、自己欺瞞を自己欺瞞とも感じずに安穏たる日々を送る「大人」のわれわれの、一人ひとりの胸を抉る。彼女を批判し、揶揄する「大人」のいったい誰が、これほどの強さを持ったことばを発することができただろうか。彼女の前で、おのれのおのれに対する欺瞞を恥じずにおれる「大人」が、いったい何人いるだろうか。

 

 と、いつもの爺庵に似つかわしくない言辞を書き連ねてみたが、ここからは恒例の(といっても、いったいこのブログを更新するのはいつ以来だよと自問せねばならないが)、時事評である。そもそも爺庵の爺の字は時事から来ているのだから(「ジジノジハジジカラ」というのはちょっと面白い響きがあるなぁ)。

 

 安倍晋三の桜を見る会問題はどうやら通常国会に追及が持ち越されるようだ。この間の政治家や官僚たちの詭弁ぶりは、かつてなかったほど低劣卑劣悪辣滅裂を極めた。ま、安倍にすれば致命傷につながる悪事が露見したわけだから、命をかけて嘘八百を並べ立てるしかなかっただろうが、安倍の詭弁を必死になって正当化しようとする官僚たちの姿をニュースで見ていると、もとより国の官僚という種族は詭弁を弄することによって身を立てている存在ではあるが、その保身ぶり、平目ぶりには哀れみさえ感じたものだ。そんな露骨な嘘をついてまで、嘘つき政治家を守ってやって、それで何かいいことがあるのかよ、と。昔、青島幸男が佐藤栄作に向って「総理は財界の男妾だ」と叫んで物議をかもしたことがあったが、その言を借りるなら、官僚連中は皆、安倍の男妾だな。ダンナの気を惹いておらねば生きて行けないんだ。

 

 ところで、爺庵が大嫌いなアノ御仁も、プレジデントオンラインの「橋下徹の『問題解決の授業』」と題した小銭稼ぎの場で、桜を見る会の記録廃棄問題について、結構な御説を述べておられる。ちょっと引用してみよう。

 

 事実・情報をすべて明らかにした上で安倍政権が釈明する際には、野党やメディア、そして世間から猛批判を食らう場合があるかもしれない。それでもその批判に耐えながら、説明、釈明し続けるのが政権の責任だ。

 それを「記録は廃棄し、一切存在しない」と答えるのは、民主国家としては最悪の対応だし、それは一国民として非常に恐怖を覚える。

 

 ほほう。橋下徹は記録を廃棄するような事態に対して、国民として恐怖を覚えるのだそうだ。なんと民主的なお人であることよ。だが、かつて大阪府知事時代に、橋下はこんなことを報じられていた。

 

 大阪府の橋下徹知事は26日、府幹部と送受信したメールの一部について、情報公開請求を受けた後に削除したことを明らかにした。これらは「不存在」として開示されない見込み。情報公開に取り組む専門家からは「情報隠し」との声があがっている。

 橋下知事の説明によると、削除したのは(1)9月以前のすべてのメール(2)10~11月のメールのうち、幹部と一対一でやりとりしたもの。

 削除した時期は明確にしなかったが、10~11月分のメールについては、今月に入って就任後のすべてのメールの公開請求が相次いだため、府の行政文書管理規則で保存義務がないことを確認したうえで削除したという。

 橋下知事は「個人対個人のメールは組織共用文書(行政文書)ではない。組織共用のメールは残している」と説明。削除理由については「面倒くさいから消しちゃおうという軽い判断。残せという話になれば、ごめんなさいするしかない」と述べた。

 全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士は「重要なのは、あて先が不特定多数か否かではなく、目的だ」と指摘。「幹部1人に指示したメールでも組織として用いたら公開対象になる。廃棄は究極の情報隠しだ」と批判した。

 

 この記事は今でも、asahi.comで読める。このときの橋下の遣り口は、共産党から資料要求があった途端に名簿をシュレッダーで廃棄した平目官僚、詭弁を弄する安倍ら政府首脳とまったくおんなじである。そんな輩が「恐怖を覚える」だと。はは。

 

 How dare you!