UEFAチャンピオンズリーグ決勝 | 爺庵独語

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爺庵の独善的世相漫評

 昨年のこの日は午前三時にモゾモゾと起き上がってテレビのスウィッチを入れたが、今年は六時過ぎまで寝てしまった。もう終わっているかと思ったマンチェスター・ユナイテッドとチェルシーとの決勝戦は、その時刻にまだ決着がついていなかった。見はじめたのは後半ロスタイム、両チームがそれぞれ一人ずつのメンバー交代をするところで、プレーが再開した途端に、終了のホイッスルが鳴らされた。PK戦である。
 息詰まるような、という表現は俗っぽいが、こうしたビッグゲームでのPK戦というのは、まさに息を止めて見守らなければならないほどの緊張感に包まれる。
 チャンピオンズリーグでは三年前のミラン対リバプールの決勝が3対3の同点でPK戦になって、ミランのエースだったシェフチェンコらが失敗してリバプールが歴史に残る大逆転での優勝を手にした。
 二年前にはドイツで行われたワールドカップの決勝がPK戦にもつれ込んだ。このときはレッドカードを受けて退場したジダンを欠くフランスが、そのせいでもなかろうがトレゼゲが外して敗れ去った。
 いずれも爺庵はリアルタイムで、手に汗握りながら観ていたものだ、もちろんテレビの前で、だが。
 マンUとチェルシーのPK戦はマンUの先攻で始まり、三人目のクリスチアーノ・ロナウドが止められてしまった。これは止められたC・ロナウドを責めるよりも、トリッキーなフェイントに微動だもしなかったチェルシーGKのツェフを褒めるべきだろう。
 チェルシーがリードしたまま最後のキッカーに歴戦のつわものジョン・テリーが出てきたときは、チェルシーの勝利を確信したものだが、雨でスリッピーな芝に軸足を滑らせ、ゴール右を狙ったインサイドキックはわずかに軌道がずれてポストの外に飛んだ。チェルシーには不運な、そしてマンUには僥倖と呼ぶべき出来事だった。
 絶体絶命のところから息を吹き返したマンUは、サドンデスとなってから若いアンデルソンと大ベテランのギグスが決め、そしてチェルシーは冬のメルカートで獲得したFWアネルカがマンUのGKエドウィン・ファンデルサールに止められて勝負がついた。
 目の前までビッグイヤーを引き寄せながら、それをつかむことができなかったチェルシー。PKを外したジョン・テリーが、あのレスラーのようにいかついキャプテンが泣き崩れて動けないのを見るのはつらい。一方のマンUも、PKを止められたC・ロナウドがピッチに顔を埋めていた。
 勝者と敗者、涙であがなうものの価値は天と地ほども違う。