私にとって大恩人である先輩が旅立ちました。
享年84歳。
先輩の奥様から亡くなられたことを知らせていただいた葉書が届いたのは数日前でした。
文面にはこんな言葉が綴られていました。
“豊かに人生を駆け抜けた84歳の人生でした”
先輩の人生は本当に豊かで、見事な人生の“舞台”を見せていただいたと思っています。
最後にお会いしたのは5年前の“七夕”の日でした。
数寄屋橋交差点の交番の前で待ち合わせ、銀座の裏通りの蕎麦屋に向かいました。
久しぶりの再会でしたから
「七夕の日に再会するなんて、まるで織姫と彦星みたいだね。」
などと話ながら笑いあっていたのがつい先日のようにも感じますし、随分と昔のようにも感じます。
先輩からはとても大切な金言を頂戴してきました。
「宮ちゃんはCHORESという英語を知っているかい?
日本語でニュアンスを伝えるのは難しいんだけど“日常雑事”みたいなことかな?」
先輩が私に伝えたかったのは“日常雑事”を何気なくこなせていることが、幸せということなんだとおっしゃっていました。
朝、布団の上げ下ろしが出来るとか、歯を磨けるとか、花に水遣りが出来るとか。
あらゆる日常生活に欠かせない日常雑事の大切さを語り
「歳を重ねるということは当たり前と思っていた日常雑事が出来なくなるということだと思うんだよね。
だから、日常雑事ということの幸せを感じられる人生を生きて欲しいと思うよ。」
ということを私に諭すように話してくれました。
すでに、私が若かりし頃の上司と部下の関係ではなく、それはまるで師弟関係の様でもありました。
今更ながら感謝の念に堪えません。
生前先輩からは
「宮ちゃん、人生で大切なものはね。
“本”と“旅”と“人”だよ。」
と、おっしゃっていて、先輩から薦められた本を随分と読みました。
それらの本は先輩に薦められなければ一生読むことがなかった本ばかりでした。
残念ながら茅ヶ崎の海辺の町に住んでいらした先輩と、海岸を一緒に散歩することは叶いませんでした。
なので、今日は”形見”となってしまったお借りしたままの本を海に持っていき、私が波乗りをしている間、ダッシュボードにその本を供えておきました。
先輩、ここが私の好きな場所です。
いつか、私もそちら側に行きますので、そのときにこの本はお返ししたいと思います。
その際はまた一杯やりましょう。
それまで、しばしのお別れです。
先輩と最後のLINEを交わしたのは2022年の誕生日メッセージを送った時でした。
先輩からはこんな返信を頂きました。
「宮ちゃん83歳になりました。
遠いところまで来てしまいました。」
合掌