難易度★★☆☆☆

Can't Stop Fallin' in Loveは、1996年12月発売のglobeの7枚目のシングル。セールスは累計131.5万枚

$90年代J-POPの世界へいざなおう!

このブログではこれまで比較的解釈の難しい曲を重点的に取り上げてきましたが、あまり難しい曲ばかりを扱うのもよくないので、今回は比較的易しい曲を取り上げてみたいと思います。

この曲の主題はタイトルから明らかなように、理性では抗うことのできない恋の有り様です。人は誰かを理屈によって好きになるわけではありません。恋という現象は、その起源をたどれば動物的なものであり、誰かを好きになるということは、通常、自分の意思や理性とは無関係に生じると言えます。恋は(それ自体としては)道徳や社会的なルールによっても縛られず、誰も恋に落ちるのを止めることができません。

Can't Stop Fallin' in Loveの歌詞では、その典型として「不倫」という場面が想定されているように見えます。冒頭の「指輪」という表現や「人には話せない」といった表現がこのことを暗示しています。道徳的に見ればいけないことだと頭では分かっていても、湧き上がる恋という感情を誰も止めることはできません。サビの「踊る君を見て恋が始まって」という歌詞は、人が素敵な異性とめぐり合って恋に落ちる瞬間を比喩的な仕方で、当時の時代の雰囲気にのせて巧みに表現しています。

しかし、どのみち不倫の恋に幸福な結末など存在しません。このことは主人公の女性にも分かっています。それゆえ二番の歌詞では、恋の終わりを予感しつつ自分よりも不幸な恋をしている他人と比べることでしか自分を慰めることのできない悲哀が語られています。後半のサビのリフレインでは「あなたの髪にふれ 私ができること 何だかわかった」と歌われていますが、その答えは直前の「いつも笑顔だけ 見ていて 満たされる」という歌詞に集約されていると思います。

内容の点から見てこの曲の歌詞の優れたところは、不貞なドラマなどが描くストーリーとは異なり、不倫の恋を美化するわけでは決してなく、その悲哀を淡々と描いているところにあると私は思います。不倫を暗に肯定し賛美するような内容のドラマが当時は流行りましたが、作家は自分の作品が社会に対して与える影響を決して過小評価すべきではありません。もしそのような影響を当初から考慮に入れていないとすれば、そのような作家は作品がヒットしたかどうかに関わりなく二流だと私は思います。

この曲は真に相手のことを「思う」ということがどういうことなのかを教えてくれるように思います。いずれにせよ、多くの通常の人間は理性やモラルと衝突する状況に陥っても葛藤することなくそれらを排除したりはしないし、それらを抜きに語られる「人間」というのものが人間の「本質」を表すという考えもまた一部の退廃的な快楽主義者を除いては絶対に支持を得られないのです。