映画 『 ほかげ 』
世界大戦
もう何度目の戦争なのか?
人類はいつまで戦争をし続けるつもりなんだろう?どうしても戦争をやるならなぜ当事者同士だけてやらないのか?なんで国を挙げての戦争にするのか?なんで自分たちが勝手に起こしたことなのに、いつでも犠牲になるのは一般市民なんだろう?なんで一般市民を巻込むんだろう?なんで一般市民を殺してもいいんだろう?交戦権?戦争をする権利などどこにどうあると云うのだろう?いつまでこんなふざけた権利を認め続けるのだろう?
東京大空襲
何もかもが焼け尽くされ破壊されたとしても
何もかもを根絶やしにすることはできない。
焼け残ったバラックの中で
それがあるだけでもまだマシ?生き残った人々はそこで生きていくしかない。本来なら、ここから新たな生活スタイルを模索することもできたはずだが、人は安易に従来通りの生活を選択する。生きてくだけで精一杯か……?
おそらくダニやシラミなどが棲息してる
それでも布団があるだけマシな
万年床の上で寝ている?女
安眠できてるとは云えず
ごそごそと蠢いてる
その尻が寝姿の中、強調されてる……
あまりに無防備
鍵などもちろん付いてない
誰でも入って来れる
カウンターがある店兼住まい?
招かれざる客?
油断も隙もない
何かを噛じる音
喰えるものがあるだけまだマシ……
闇の奥に浮かぶ子供の姿
怯えてなどいない
生ある目……
この環境化では
大人も子供も境目などない……
南瓜?の生噛り
盗めるものがあれぱ
自然と手が出る
それが今を生きるということ
商売として成り立っているのかどうかもわからない。でも金を稼げるすべがあるだけマシ?
引き戸を引く
ここにたどり着いた者たち
怖じ気づいて入れないもの……
この一線を越えるということ……
客は生き残って帰って来たら
家も家族も無くなっていた
帰る場所のない復員兵……
堕ちるとこまで堕ちても
自分の中に残っているもの
何も売るものがないものが売るもの……
見かけは人の良さそうな
斡旋業?のオトコの存在……
本来なら上客であるはずの
アメリカ兵ではなく
なぜかしみったれた気の弱そうな復員兵のみに
声を掛けてる。トラブルが起きてもなんとかなりそうな奴だけに?
質の悪い(メチル入り?)合成酒を持ってくる
でも酒があるだけマシ?
気が向けば女の体を求める
それはこの関係性の約束事?
カウンターの下から
伸びてくる女の指先、掌、腕……
なんとか這い上がってくる……
闇の中に白く際立つ……
また、新たな復員兵
遠慮がちで一見気が良さそうだが……
一回分のやり取りが終わった次の日の朝
お金を外でつくってくると言いながら……
居座っていく……復員兵は女のどこを見てそう思ったのか?
ガキじゃ商売にもなりゃしない
昨日の子供も野良犬のように
この家に寄り付いてくる
たとえ追い返されたとしても
それでもまだマシなとこに思えた?
子供は厄介ものでしかない
変に親しくなってしまえばほっとくわけにもいかず、余計な人情が生まれてしまう。自分ひとりでも精一杯なのに……
子供が盗ってくる食材
男がつくる料理
疑似家族
失われていた家族の幻影
ごっこ
朝、出掛けて仕事を探しにいく……
この生活を支えるために?
しかし、復員兵は手ぶらで帰って来る
子供、坊やはなんらかの喰い物を持ち帰る
それはどうやって手に入れたものなのか?
明かりのなかった家に灯る
ランタンの明かり
明かりが灯れば
光を求めずにはいられない
人間は極めて贅沢な生き物……
復員兵が持っていた算術の教科書
過去は教師だった?
明かりの下
子供に教える勉強
授業の真似事
汚れることなど無頓着だった子供の体を
拭きあげる女
もっともらしい……
人間らしいおこない?
奥にあるもうひとつの襖は
女にとって開かずの間
子供が入ることを
断固拒否する
その奥には女にとって
何があるんだろう?
三人川の字になって寝る……
朝になると
「かね、つくってきます」といって
出ていく復員兵……そしていつも手ぶらで帰って来る
子供が肌身はなさず持ってる
開かずのバッグ。
その中には子供にとって何があるんだろう?
夜毎うなされる悪夢……
それは想像の産物などではなく
実際に降りかかってきた実話……
消し去りたくても
何度も脳裏によみがえる
無傷の人間などこの世界には
存在しない……
本当の父さん母さんみたいに
うなされてる子供の身を案じる
ここが安住の地……?
枕もとで語る夢物語
家族旅行、疑似遠足……
はじまる遠足ごっこ
率先して復員兵と子供が演じる
それに遅れて女も演じる
エアおにぎり
女も最後におにぎりを手にとり
食べる
でもこれは単なる現実逃避?
外に轟く銃声
現実
甦る悪夢……
それが瞬く間に男の全身を覆ってゆく
それを振り払おうと女に乱暴しようとする
それはおそらく戦地で男がやってきた振る舞い
子供の制止もまったく効果なく
邪魔者は窓の外に放り出される
それは今まで見せることがなかった男の姿
あっけなく終わった疑似家族
男の脳裏は遠くになったはずの戦地に
イッてしまった。それは戦争が男に与えた対価
そこから救い出したのは……
男の頭に振り下ろされる空き瓶
子供が手に持つ割れた空き瓶。
ニセの母親を守るため?
片手には拳銃
子供が後生大事に持ち続けていた
唯一のちから……?
男は父親役から正(狂)気に戻り
家から追い出された
男は過去
女は今
子供は未来
邪魔な父親は消えた
坊やとふたりだけの蜜月
坊やから拳銃を取り上げて
空き缶に封印する
坊やに与えられた新たな役ドコロ
用心棒……?!
人間らしい生活を取り戻す?
開かれる奥の襖
それはとうの昔に亡くなっていた
旦那と子供との思い出の部屋
それは女が固辞しつづけていた
女の夢物語……
復員兵が置いていったお守りと言っていた教科書……ふたりだけで勉強する足し算
女のもとの仕事はお針子さん?
器用に坊やや自分の服を仕立てる
坊やに与えられた新たな役ドコロ
それは生きる糧……?
坊やの存在によって
消えかけていた
母性に再び火が灯る?
もう戻ってこなかった復員兵……
朝になると坊やが出てゆく……
「いってきます」
「いってらっしゃい」
夜になると坊やが持って帰って来るもの……
それは真っ当な仕事で得たものなのか?
坊やが悪事や盗みに手を染めないよう
頑なに正そうとする女……
それは子供の母親ならば当たり前のことか?
ヤッてきたことは人として終わってても
まともな人間として生きたいと願う
それでも危うい子供の立ち位置
外の世界はいくらでも危ない道に続いている
遅くに帰って来た坊や
傷だらけ……
新しい出会い、儲け話……!?
一週間の遠足気分?ただし拳銃所持が条件
そんなことを黙って許せない女
女はあくまで内なる世界に生き
坊やは日々見る外の世界を生きている
とにかく「断ってきて!」
圧倒的な女の固辞。聞く耳がない。
女の過去にあったこと……?!
母親の言ってることはもっともだけど
どこかすんなり聞く気にはなれない
それは自我のめざめ?
出てゆく……
我にかえって
鏡を見据える女に告げられる現実……
酒を手にやって来た斡旋業のオトコが
いつものように
求めようとするその行為を止める
それは今まで生きるために演ってきた
ことに対する対価……?
朝になって戻ってきた坊やに終わりを告げる
繋いでいた縄をほどき、突き放す。
黙って拳銃を持って出てゆく坊や
あっけなく終演した家族ごっこ?
女の部屋の焼け畳が
外の東京の
破壊され尽くした焼け野原に
映りかわっていく
うちとそとはつながっていた
女はそこから出ることができなかった
緑豊かな田園
坊やは疑似遠足へ
テキヤの男をパートナーとして
連れション
片手で演る魚の掴み取り
どこぞの子供が道端で売り買いされている……
テキヤの男も夜毎うなされてる……
寝ても起きても地獄
みんながうなされてる……
村の一軒の家で幽閉されてる男
戦争帰り。精神を病んでしまってる
飯の世話をする母親
かつての息子の面影はどこにもない
死んでしまった
戦争の悪夢の中で生きつづける
不憫な息子……
そんな姿に共鳴してるテキヤの男……
この世にまともな人間はもういない?
みんなちょっとずつ病んでいる……
狂っている……
テキヤの男の正体は
右手の機能を戦地で失った
傷痍軍人
焚き火……
これからやりにいくこと?
どっちみちお先真っ暗……
拳銃に残された弾は4発
神の思し召し?
ちょうど4人分……?
同じところを逡巡して
やっと決心した殺意?!
子供の役ドコロは
テキヤの男の決意を固めるトリガー?
ある家の様子を伺う
その家には老夫婦が普通に暮らしてる……?
穏やかに見える家族のひとコマ
食卓を囲み語らう
人間らしいまともな風景……?
その姿をみたテキヤの男は身悶える
そのまま夜になるまで様子を伺い
やっと決心が固まった?
坊やを使いに走らせる……
その男はテキヤの男の上官だった
あきもとしゅうじ。テキヤの男の名前
この映画の登場人物で唯一語られる名前……
戦地で受けた理不尽な命令
それによって死んでいった3人の戦友……
坊やに連れられて、昔話でもするかのように
暗がりから現れる元上官
見かけ悪びれたとこなど少しもない……
「戦争だから仕方ない……」
「気にするな……」
この上官は、夜毎悪夢を見ないのだろうか?
上官に告げられる戦友の名前……
許すことなどできなかった
あの悪夢を晴らすためには
この方法しか思い浮かばなかった
選択の余地などなかった
テキヤの男から語られた戦場の現実
それを聞かされてる坊や
上官の手足を撃ち抜いていく……
4発目
相手の額を……
自分の頭を撃ち抜こうとするがやめる?
できない?
自分の分も含めたひとりひとりの4発
しかしトドメは差さない
半死半生の身で与える
生き地獄……
終わらせない戦争として
一発残された銃弾
それはなんの為に……!?
坊やは人殺しの武器である拳銃を受け取るが、約束の稼ぎを受け取ることがてきない。
汽車賃だけを受け取り、テキヤの男は家のひとを呼ぶように指示する。これが坊やにテキヤの男が見せた戦争の授業……これが普通の人間だったはずのテキヤの男に与えた戦争の対価
真っ暗な道の向こうに戦果を告げに
伝令として走ってゆく坊や
上空を
虚空を見上げるテキヤの男……
男の胸中に晴れ間は見えたのか?
男は終戦を迎えることができたのだろうか?
その胸中に去来するものは?
唯一の家に帰って来る坊や
女の声で告げられる現実……
病魔
性病、梅毒?
女が大切にしてきた奥の部屋は
再び開かずの間になる
もう2度と会うこともない?
この前言った暴言を詫びる
この現実の前、怖い母親役を演じた?
あの斡旋業の男が面倒をみてくれてる?
「しっかり生きてね」
拳銃は置いていかせる
今度はその願いに従う坊や
拳銃は再び缶の中に封印される
拳銃の意味をしっかり学んだから……?
これで女がしてきた坊やに対する
授業はおしまい……
女がこの拳銃を手に取ることは
あるのだろうか……?
再び下野に放たれる……
ひとりで生きてゆく
外に広がる闇市……
露店で米軍の残飯汁を売っているオヤジの店
米軍が遺棄した食べかすゴミを再利用して売っているのに結構繁盛している
次々に客が訪れ重ねられていく器
そこに勝手に座り込み器を洗い始める子供
それに怒る店主。ど突かれる
何度も何度も、やめずに喰らいつく
そのまま放置されても、そのまま洗いつづける
そのあとどれくらいの時間が過ぎたんだろう?
ある時差し出される器。その中に入れられてる残飯汁。子供は箸をつける。子供が一人前として受け入れられた瞬間。労働の対価。まともな仕事をして……そして給金も……新たに見出した居場所……自分で見出した授業
闇市
その巣窟に固まっている復員兵の一群
おそらく現実から逃げ切るために
自らヤク中?になっている
それを目にする子供……
その中にかつての疑似家族の男の姿を見る
これも逃れようのない戦争のもうひとつの現実
誰も責めることなどできない……
子供はそれまで大切に持っていたお守りの?算術の教科書を巣窟の入口に置いてゆく……お守りとして?
その一部始終をあの男は朦朧とした
脳裏の中でわかったのか?
わかろうともしなかったのか?
教科書はなにかの引き金になるのか?
あの女のことを気にかけて
なにか自分にできることはないかと
試みてみても今の自分には
なにもできることはない
一発の銃声が響く……
それはあの男にとって引導だったのか?
それとも救いになったのか?
それとも…………!!?
もう以前の子供とは違う
それなりの現実を見て学習して
今を生きている……
目の前に広がる闇市
そこは今までとはまた違ったとこに見える
その中に迷うことなく入っていてゆく子供……
その姿は人波にもまれ
すぐに見えなくなる……
それは未来……
そこではあらゆるひとたちが
あらゆることに手を染めて
懸命に今日を生きぬいている……
私の記憶の中にも
渋谷に傷痍軍人のひとがいて、その不自由な体でアコーディオンなどを奏でていた姿が思い出されます。その失われた手足にどこか畏怖の念を抱いていました。その後、なんちゃって傷痍軍人さんもいることを知りました……笑
あと自分の住んでいたところにはまだ戦時中に焼け残った軍の施設の一部が残っていて、子供の頃にはその屋上に登って遊んでいた記憶があります。そのあとすぐに立入禁止になり、その後取り壊されてしまいましたが……
今思えば、あの頃までまだ戦争は身近なものだったんだと思っています……