フィッツジェラルド 『グレート・ギャツビー』 | ジダラク

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自堕落。星5つ満点の書評+αな日記。

 
 フィツジェラルド, 野崎 孝
 グレート・ギャツビー

★★★☆  3.5/5


 いくつか邦訳がある中、新潮文庫版(「華麗なるギャツビー」改題)を読んだ。サリンジャーなどでも知られる野崎孝の訳文は古びていない。

 wikipediaによれば、2006年11月に村上春樹訳が出るらしい。なんでも「ノルウェイの森」の登場人物も愛読しているとか。自堕落な私は「ノルウェイの森」読んでないけど。ま、そちらは気が向いたら。


 慎み深い性格の語り手・ニックは生まれ育った中西部から東海岸のニューヨークへと居を移す。田舎から都会へ、というわけ。ニックの新居の隣には広大な豪邸があった。毎晩大勢の客が訪れ、絢爛豪華な”ささやかな”パーティが催される――その家の主の若い男は名前をギャツビーという。やがてニックはギャツビーに会い、彼にデイズィ(主人公の幼馴染)との間の仲立ちを頼まれる。5年前、ギャツビーとデイズィは愛しあっていたが、いまやデイズィはトムと結婚しビュキャナン夫人に。夫との不仲もあったデイズィはギャツビーと再会して心を揺さぶられる。



 「ぼくなら無理な要求はしないけどな」思いきってぼくはそう言った。「過去はくりかえせないよ」

 「過去はくりかえせない?」そんなことがあるかという調子で彼の声は大きくなった「もちろん、くりかえせますよ!」



 ノスタルジーに本作の登場人物やストーリィはとりつかれている。ギャツビーは若き日の一瞬を追い求め、彼女のために財を成し過去に帰ろうと華麗に舞う。尊大ながらどこか頼りなげな彼はとても魅力的な人間に描かれている。

ギャツビーが登場したところから、一気に物語は輝き始める。息をつかせぬ展開とそれを支える情景描写はとても巧みだがしつこさはない。

 無関心な空気に包まれた都会の中で、主人公の目を通して描かれるギャツビーの活躍は輝きを帯びた風のようだ。幾許かの薫りを残して風は駆け抜け、去っていく。本を一度閉じ表紙の下の楽しい時間を思い出した後、冒頭のエピグラムを読み返し、もう一度彼に思いをはせてみる。