「キキ」


「岸岡智樹のラグビー教室」で出会った小学6年生のキキ。


初めはシャイで、あまり話をしてくれなかったが、2人でパスをしたことで打ち解けた。


キキは、ラグビーをやっていたお父さんとお兄ちゃんの影響でラグビーを始めた。


何もない場所で転んでしまうような子だったらしく、ご両親は「大丈夫かな?」と心配だったそう。


でもキキは、ラグビーが大好きになった。

「練習が楽しくて、ラグビーが楽しくて仕方ない。」

そう私に笑って話してくれた。


ラグビー教室が終わった後、キキと2人で大浴場に行った。

キキは、お母さん以外の大人と

一緒にお風呂に入るのは初めてだったそう。


するとキキが私に言った。

「ラグビーは楽しい。

でも練習で二人組になってと言われた時、いつも1人になるから寂しい。


蘭さんはどうやって乗り越えた?」と。


少し悲しそうな顔で問いかけるキキが、幼い頃の自分と重なった。


私は3歳からラグビーを始め、中学3年生まで男の子と一緒にラグビーをした。


小学4年生の時に違和感を抱いた。

ペアでパスをする練習はいつも余る。

身体能力も周りと比べて低く、

できないことばかりの自分に嫌気がさした。

そんな私を見たコーチは父に、

「蘭はもうラグビー危ないかもしれない」と気を遣って言ってくれたそう。


そんな私は、ビーチラグビーをきっかけに変化した。

足場の悪い砂場は、普段グラウンドでは勝てない男の子達と

フェアな状態でラグビーができる。

タックルしても、されても、痛みを感じにくい。

怖がって何もできなかった自分が、怖さを乗り越えた瞬間がそこにはあった。


ペア決めの時いつも声をかけられることを待っていたが、自ら「一緒にやろ!」と声をかけるようになった。

足が遅くても、タックルが外されても、絶対に諦めないで最後まで追いかけるようになった。

みんなが辛い時、誰よりも明るく声を出すようになった。


ラグビーが上手くなるためには、

みんなに認めてもらい、パスをもらえるような信頼が必要。

そのために必要だと思う行動を選んだ。


誰かに気づいてもらうことを待つのではなく、誰かに気づいてもらうよう自分で動くこと。


「あきらめず、声をかけてみな。自分で声をかけてみるの。

そうすればきっとペアが見つかるよ。」


キキにとってとても大きな悩みだと思う。

解消できたかはまだ分からない。

それでも、私の言葉がキキの何かに役に立てたら嬉しいなと思う。


また悩んだら一緒にパスをしよう。