タマ美は、以前勤めていた大手の会社を退職し、新しい会社で働き始めていた。
以前の会社では息苦しく、きっともっとオープンで楽しい会社はほかにもあるはずだと思ったからだ。
初めのうちは、転職したばかりで楽しくやっていた。
それも半年が過ぎる頃には、状況は以前とあまり変わらなくなっていった。
それどころか、チームの先輩からは怒鳴られ、無視されることも少なくなかったのだ。
タマ美「なんでみんな、わたしを認めてくれないの。こんなにやってるじゃない。いろいろ言われて努力はしてるけど、出来ないのよ。出来ないわたしは認められないの?」
そう思っても、自分の気持ちを伝えることは出来なかった。
タマ美は、自分が出来ないなんて言って、まわりにどう思われるかが恐かった。
周囲に対するイライラは、日に日に募っていった。
「でも…きっとわたしの能力が足りないんだわ。もっと頑張って、結果を出さないと。」
そうして、タマ美はみんなのように能力がない自分を責めた。
もっと仕事に集中しなきゃ、結果をださなきゃと思うほどに、どんどん空回りしていった。
転職して半年くらい経ったころから、朝起きれなくなった。
いつまでもぐずぐずして、ベッドの中で過ごす毎朝。
ぼーっとして、外の景色も灰色に見えた。
食事も味がせず、砂のように感じた。
食べてもおいしくないので、体重は減る一方。
そして、ずいぶん前から血便が出ていることを気づいていたが、生理不順だろうとタマ美は見て見ぬふりをしていた。
血便は、出始めた頃から約半年続いていた。
朝、トイレからなかなか出れない日もあった。
そんなある日、便器が血で真っ赤に染まった。
明らかに生理でもない。
それを見たタマ美は、ようやく病院へ行く決意をした。
診断は、潰瘍性大腸炎。
再発を繰り返し、完治することはない難病だ。
止まらない下痢と血便。
精神的にも、うつ状態だった。
タマ美はそんな自分を、恥ずかしく思った。
自分は仕事もできず、朝も起きれず、トイレからも出られない。
なんてクズなんだ。
なんてクズなんだ。
生きていたって仕方ないんじゃないか。
食事する気力もない。
お風呂に入る元気もない。
部屋もごみだらけ。
汚かった。
でも、それが自分にはお似合いなんだ。
出来ない奴なんて、必要とされない。
それでも、助けてとは言えなかった。
本当に、なんで生まれてきたんだろうと、心のなかで繰り返しつぶやいていた。
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