今年の4月の話。

長男が中学校に上がりました。科目ごとに担当教師がつくのは初めての経験です。よく小論文の練習問題にもなる、アレを思い出しました。「小学校でも、教科別担当制にすべきか?」。

この小論文問題に取り掛かるには、教科別担当制のメリットとデメリットを、余すところなく論じる必要があります。

長々と書くつもりは無いので、結論から申し上げます。小学校で教科別担当制を採用するメリットはありません。デメリットしかありません。それにとどまらず、中学校においても、本来教科別担当制は、デメリットが大きく、採用すべきではありません。教師は全ての教科を教えられる能力を備えているべきです。小学校のほうが、すごいのです。

意外に思われるでしょう。長男が受けた初回の数学の授業で例示します。

中一の数学で、最初に教えるのは、「正の数、負の数」です。数学の先生は、温度にはマイナスというものがある。標高にも、海の深さを数える時は、マイナスの概念を使う。借金もマイナスと考えればいい。こんなふうに説明したといいます。

おおむね理解出来ます。大人には。しかし、マイナスの概念の本質は、基準となる「ゼロ」の概念です。そこが全く含まれていません。セ氏とカ氏の0度はちがいます。標高の基準は海面、と言うけれども、それはどのようにして決まったのでしょうか?借金を確実にマイナスと捉えることができるには、「債務超過」の概念が不可欠です。この教師は、そういうディテールをすっ飛ばして、大人の日常的知識を前提に語っています。生徒たちに理解の忖度を無理強いしています。

日本の標高は、東京湾の平均海面を基準にしているそうです。つまり、この教師は、「平均」という数学でもっとも重要な概念の一つを復習させる機会をスルーしてしまっています。ついでに言えば、なぜ海面が時ともに変動するのか、という自然な疑問を口にする機会を生徒から奪っています。満潮干潮が起きるメカニズム、大潮が満月と新月に起きる理由を語る機会も失っています。借金が必ずしもマイナスではなく、力の源にもなるという事実も恐らくご存知ないのでしょう。

私は教科別担当制に、そもそも反対です。先生はワンストップであるべきです。私は常にそうあるべく努力します。知らないことは知らないといい、一緒に調べようと言います。決して〇〇の教師に聞け、とは言いません。