テレビで、ジャニーズの社長の性加害の実態が報告され、その被害を継続させたものの一つに、マスコミのこの問題への黙認が挙げられていました。このニュースを報道しているテレビ局は、襟を正さなければいけないと、発言していました。しかし、なぜマスコミが黙認していたか、そのことについて語りませんでした。テレビ局側が、ジャニーズのタレントを起用したくて、ジャニーズ社長の性加害を知っていても黙認していた、逆らえば、タレントの起用に支障が出るかもしれないという思いで、黙認していたことは、だれが考えても思い当たることですが、この核心部には一切触れていませんでした。

 社会の悪に対して、いつも毅然たる態度をとり、公平で公正な報道をするべきだと思いますが、自分たちの過ちについては、きちんと分析できない弱さが明らかになっています。

 私は、大学の学生寮に入ったときに、先輩から「君は、マスコミを信じているかね?」と、問われたことがあります。私は、何を言っているのか、その時はよく分かりませんでした。しかし、その後、自衛隊の実弾演習反対のデモに出た時、そのテレビ報道を見て、こういうことかと思いました。はじめデモは整然と行進していました。ところが途中から、両側から機動隊に押されて、ジグザクに進むことになり、機動隊の「ジグザク行進はやめなさい。」という拡声器からの注意があると、デモのあちこちで、デモ隊と機動隊の押し合いとなりました。テレビ報道では、この最終局面のみが放映され、「デモ隊は、各所で機動隊を押し、乱暴なデモ行進をしました。」というコメントがなされていました。

 事実の映像でも、どの部分を切り取るかで、「何とでも報道でき、それに合わせたコメントを付ければ、見る側を惑わすことができる」のです。これを巧みに使ったのが、「怪物」という映画です。興味があれば、この視点で、この映画を見てください。