「コーヒー、濃く出してね。トーストを上手に焼いてちやうだい。ついでに、卵の半熟一つ、あたしだけよ。出来たら、食堂へ行くわ」
かうして、距てのない馬鹿話がひとしきりすみ、食堂を出て、鈴江の居間へ通る。ここだけは六畳の畳敷で、純和風の凝つた女部屋である。
「あたし、この部屋、わりに好きなの。嫂が、和室がひとつどうしても欲しいつて作らせたんですつて……。だんだんお婆ちやんになると、あたしも、坐るとこが性に合ふんだわ」
「ハイカラなあなたでもね」
「ハイカラはよしてよ。ことに、近頃は、外人とつきあふでせう。身についたもんで太刀打ちをしなけれや、うつとしくつてしやうがないの。
