日韓両国の高齢者、そしてこれから高齢期を迎える50~80代の暮らしを比べてみると、「富の流れ」がまったく異なる方向へ進んできたことに気づく。
韓国の50代・60代・70代・80代は、子どものために一生懸命働き、人生を捧げてきた世代だ。しかし、「お金がない」「老後が不安だ」とため息をつく人は少なくない。
一方、日本の高齢者は、定年後にクルーズ旅行へ出かけたり、高級温泉を楽しんだりする「アクティブシニア」として紹介されることが多い。
「韓国の親世代は世界でも有数の高額なソウルのマンションを持っているのに、なぜいつも現金がなくて苦しいと言うのだろう? 一方、日本の高齢者は若い世代よりお金を持っていると言われるが、いったいどのような資産形成をしてきたのだろうか?」
韓国人の視点から見ると、不動産価格が大きく上昇した時代を生きた親世代が、なぜこれほど経済的不安を抱えているのか不思議に感じる。
逆に日本では、「高齢者がお金を使わないから経済が回らない」という議論が繰り返され、高齢者が資産を多く保有していること自体が社会問題として語られることもある。この対照的な違いの背景には、両国の親世代が築いてきた「資産ポートフォリオ」の違いがある。
韓国の50~80代は、資産の約70~80%を不動産が占め、金融資産は20~30%程度というケースが多い。長年かけて築いた資産のほとんどが、自分の住んでいるマンションや住宅に集中している。そのため、帳簿上では数億ウォン、あるいは数十億ウォンの資産家であっても、日々自由に使える現金は少ない。「House Rich, Cash Poor(家はあるが現金がない)」という言葉がぴったり当てはまる人も少なくない。
一方、日本の50~80代はまったく逆の資産構成をしている。
資産の約60%を預貯金や株式、保険などの金融資産で保有し、不動産の割合は比較的低い。1990年代のバブル崩壊を経験したことで、「不動産よりも現金や金融資産を持つほうが安心だ」という考え方が社会全体に定着した。その結果、退職後も年金と金融資産から安定したキャッシュフローを得られる人が多く、たとえ不動産価格が韓国ほど高くなくても、実際の消費力は非常に高い「堅実な資産家」が多く存在している。
両国の親世代の経済状況を分けた最大の要因は、「不動産に対する記憶」の違いだ。
韓国の50~80代は、「不動産は必ず値上がりする」という時代を実際に体験した世代である。一生懸命働いてマンションを購入すれば、その価格が数倍にも膨れ上がるという成功体験を積み重ねてきた。その結果、高齢者の資産の70~80%が不動産という偏った構成になった。しかし、その資産は「今まさに自分が住んでいる家」である。
家の価値が10億ウォン、20億ウォンになったとしても、売ってしまえば住む場所を失う。そのため、資産額は大きく見えても、日常生活や医療費に使える現金が不足するという矛盾が生まれている。さらに韓国の国民年金制度は日本より歴史が浅く、十分に成熟していないため、退職後の所得減少を強く感じる人も多い。
一方、日本の50~80代は、1990年代初頭のバブル崩壊という歴史的な経済ショックを目の当たりにした世代である。東京都心の土地やマンション価格が半値以下、場所によっては5分の1程度まで暴落する様子を経験したことで、「不動産は持っているだけで税金や維持費がかかり、価格も下がる」という強い印象を持つようになった。
その結果、多くの人が選んだのは銀行預金や金融資産だった。
日本の個人金融資産は約2,000兆円にも達し、その約6~7割を60代以上の高齢者が保有しているとされる。また、厚生年金(公務員・私学共済を含む)など比較的安定した年金制度によって、退職後も毎月一定額の年金収入がある人が多い。さらに、長年蓄えてきた預貯金や金融資産を持っているため、日本では若者向けの商品よりも、高齢者向けの高級旅行やシニア向けサービス市場が大きく成長しているのである。
結局のところ、韓国の親世代は「莫大な価値を持つ不動産という黄金の卵を抱えながら、今日使える現金が少ない資産家」であり、日本の親世代は「不動産価格はそれほど高くなくても、預金と年金という安定した現金収入を持つ堅実な資産家」だと言える。この違いは、どちらの国民がより勤勉だったかという問題ではない。それぞれの世代が青春時代に経験した経済環境と資産市場の流れが、大きく異なっていた結果なのである。だからこそ韓国では、不動産に偏った資産を住宅年金などを活用して現金化し、高齢者が安心して老後を送れる仕組みづくりが、これからますます重要になるのではないだろうか。
次回予告 : [誤解7] 日本の若者の経済事情
