東京・上海市場、日中貿易を後押し
中国の通貨である人民元と円の直接取引が6月にも本格的に始まる。
三菱東京UFJ銀行など日本の3メガバンクや中国の大手銀行などが東京市場と上海市場で取引の基準となる交換レートをそれぞれ決め、取引先企業に提示する。
これまで円と元はドルを間に挟んで取引されていた。
直接取引が広がれば手数料の削減などが期待でき、元建ての貿易決済の拡大につながる可能性がある。
直接取引には3メガ銀のほか、中国の大手行の中国銀行、HSBCなども参加するもようだ。
今も円と元の直接交換は可能だが、銀行側の体制が整っていないことなどから、円と元との交換はほぼ全量がドルを介した間接決済となっている。
日中間の貿易では人民元建て取引は1%以下にとどまっており、為替手数料などコストがかさむ難点があった。民間銀行はレートを提示することで取引を促す。
円・人民元の直接取引は輸出入を手掛ける日中の企業にとって、取引コストの低減につながるため、需要は強いとみられる。
日中両国は昨年12月の首脳会談で円と元の直接取引拡大などを含む金融・経済協力で合意した。
2月には財務当局と中央銀行などによる作業部会を立ち上げ、具体策の検討に着手。民間銀行に体制の整備を促してきた。
直接取引を通じて人民元の国際化を支援し、日中間の貿易や投資の活性化を金融面から支える。
日本は両国間の人民元の流通量を増やすことで、将来的に東京にオフショア市場をつくる狙いもある。
―――記事所見
ついに、人民元と円の直接取引市場が誕生しましたね。
これまで、日本とその他のアジアの通貨の相場は、全て対米ドルを基準にしたクロスレートで計算されていました。
つまり、人民元と円の受給に関係なく、1ドルX人民元で1ドルY円だから、X人民元=Y円という風に取引されていたわけです。
円と人民元を直接取引するメリットは、2つあります。
1つは、記事にもあるようにドルを経由するクロス取引よりもコストが安くなる事です。
ただし、これはあくまで金融機関が元と円を交換するコストが減少する事を意味します。
私達との取引にはこうした事情が反映される可能性があります(主に法人の外為取引)。
もう1つは、完全に金融機関だけのメリットですが、金融機関の通貨持ち高調整が簡略化される事です。
これまでは円対ドル、ドル対元の持ち高を別々の時間と場所で調整していたので、金融機関の外貨持ち高が偏ってしまったりするリスクがないわけではありませんでした。
日本とニューヨークではかなり時差があるので、ちょっとしたリスクになっていたのです。
(ちなみにこのリスクの事を、ヘルシュタット・リスクと言います。)
この直接取引市場の誕生は、日本の金融システムにとって大きなプラスになるはずです。
そういえば25日に人民元の対ドルレートが年初来安値をつけましたね。しかも、ドル高傾向のせいもあって、もう少し安くなりそうな感じです。
2005年に変動相場制に移行した時は、安いと言われていた人民元ですが、思えばあれから30%ほど上昇していますし、最近の輸出減も加えて言うなら、この辺が落ち着きどころとの見方もあります。
来年の4月から人民元の変動幅が、1日あたり上下0.5%から2倍の1%に拡大されますが、これも均衡点に達する事を見越した物なのかもしれません。
人民元の対ドルレートや、中国政府の市場介入の状況(外貨準備高の増加高)には暫く注目していきたいですね。