「シン!君には失望したよ 僕なんかからそんな風に逃げるなよ!」
前を向く覚悟を決めたといっても…ユルと目を合わせることは やっぱり出来なかった
「待てよ!いいのか?!聞かなきゃ後悔するぞ!」
久しぶりに上殿に出向き 朝の挨拶を済ませると さっさと東宮殿へ戻る俺を追って来たユルに肩を掴まれた
「陛下が僕にご自分の皇位を譲るなんて仰るから驚いたよ!」
は?なぜ陛下がユルに皇位を譲るだなどと…?
말도 안된다/マルドアンドェ/話にならない
何を言い出すかと思えば…
「君の位を守る為に 僕を皇帝にする事をお考えだとか…」
俺の位を守る為に?なぜ
「有り得ないとお断りしたけど…君がそんな調子なら 解った
僕も 腹をくくるよ」
なにっ!?どんな顔をしてそんな事を…!?
「それは許さない!
俺が兄さんの代わりだったんだから ただ兄さんが皇太子になればいい
恵政殿皇太后さまの望みを 叶えて差し上げたらいいじゃないか!
どうして皆 そうまでして俺の位を守ることに拘るんだ!」
やっと顔を上げた俺の眼を真っ直ぐに見据えるユルの眼は…どこまでも俺を信じるあの瞳…
嘘だろ…お前なんだろう?
お前が皇太子に成りたくてチェギョンを嵌めたんだと いっそそう言えよ!
どうして…なぜそうじゃないんだ?…何故なんだ!
何を信じて 何を疑えばいいんだよ!!??
「君はどうしてそうチェギョンの事ばかりで周りが見えなくなるんだ!
君は決定的な思い違いをしているんだ!
それが何か解らない間はチェギョンは戻ってこないし 皇帝にも成れない!」
「ナニ?!ユル兄さんが… お前がチェギョンの何を解っているって言うんだ!?
俺に皇太子で居て欲しいと言いながら 皇帝に相応しくないってなんだよ!?
俺が皇帝に相応しくないからチェギョンが離れて行ったとでも言うのか!?」
何なんだよ…解ってるんなら教えてくれればいいじゃないか…
「君を守りたくて君の元を離れたんじゃないか!」
守りたい?俺はアイツを守りたかったのに守れなかったようなヤツなのにか?
好きな女一人守れない俺が皇太子で居なきゃならない理由はなんなんだよ!?
王族会がいよいよ国会をも動かし皇太子の再婚に向けた臨時の官庁 嘉礼都監(カレドガム)を設立し 恐らく設立を待たずに水面下で準備されていた継妃候補リストは すぐさま完成し 景福宮へ届けられた
そうか… 陛下は間もなくこうなることを予測して 俺には継妃などまだ無理だろうと…
なるほどな それでユルに譲位するなどと…
俺には 皇太子の位を手放すことは許さないと命が下っている以上
継妃を受け入れなければ 父上の譲位でユルの臣下となる
選択肢はこの二つしかなく もはや猶予は無かった
俺は 心を決めた
初揀擇(チョガンテク)を受入れる故 この中から継妃に相応しい再揀擇(チェガンテク)の相手を6名選んでくれと 内命婦の長である皇后…母上に頼んだ
伴侶なんて チェギョン以外なら誰だって同じだ
あの時チェギョンを選ばなかったと思えば…何でもない事
法学部の単位も いくつか危うくなっている
死ぬ気で学ばないと すっかり後れを取ってしまった
公務にも復帰し 皇太子は完全復活 継妃を選んでいるところだと報道された
ギョンには冗談だろう?!と詰め寄られたが…
「ワケ有って そうするしかなくて… 済まないな」
「すまないって…なんだよ…」
それ以上何も言わないギョンには 俺の気持ちが充分解ってるんだ
だがきっと イ・ガンヒョンには軽蔑されるだろうな ギョンも俺も 結局は同じ男っていう生き物だとかなんとかさ
チェギョンを大切に思い 信じ待つ身としては 許せなくて当然だ
何を言われたって言い訳なんて出来はしない
カフェテリアの奥のドアを開けたところで声を掛けられ振り返る
「本気で継妃を娶るおつもりですか?」
ソ・ジュヨン?
インターンで王立病院に勤務しているはずでは?
レポートの提出かなにかで大学に来たのか?
確か茶会には来ていなかったのに 母上が選んだ再揀擇(チェガンテク)の6名に名が挙がっていた
「そういうお前は なんでまた継妃候補に名乗りを挙げたんだ?」
「あら リストなんてご覧になってないのかと… 一応見ていらっしゃるのね?」
ふん 相変わらずムカツク女だな
「チェギョンさんの行方は…解らず仕舞いですか?それとも…探すのも止めた?」
「お前には関係ない」
「あら 折角情報提供して差し上げようかと…」
なにっ!?
俺はソ・ジュヨンをドアの奥へ押し込み 彼女が慌ててテーブルに尻餅をつくほど追い込んだ
「何を知ってる?!」
追い詰められてテーブルに座った状態のソ・ジュヨンは 俺の気迫に生唾を飲む
「ジ…ジテが… 消えたの」
は…?
「それとこれとどう関係が有る?」
「チェギョンさんが居なくなったのと… 時期が同じよ」
「はっ 馬鹿げてる それだけか?」
「いいえ… 彼は以前からチェギョンさんの事が 少し…いえ かなり好きだったわ
それに…これは幼い時からだけど…貴方が嫌いだった」
「감히…(カミ…/よもや…)皇太子妃を…皇太子であるこの俺から奪う程にか?」
「解らないわ とにかく 私もユルも ジテを心配して ずっと探してるの」
ユルはそんなこと何も言わなかったが…まあ…俺があれじゃ…言えないか
俺が大学のカフェテリアの個室にソ・ジュヨンを入れた事は 瞬く間に大学の外にも広まり
あれ以来度々東宮殿へ通って来るキム・ミニョンと並び 継妃候補のなかでも有力かと騒がれた
ふん… 実はこれが狙いだったのでは?
しかし…念のため コン内官にソ・ジテの事も調べさせた
ユルとの対峙 陛下の苦悩 皇太子派の王族達
自分が皇太子である事を望む チェギョンを含む人々の為に
継妃を娶ることを受け入れたシン…
チェギョンの失踪にジテが関わっている?
9/12(月)→363話を更新できずにみあなむにだ
기다려주십시오/キダリョジュシプシオ~