緊張しながら、そして真っ赤な顔でチエがみんなに頭を下げた。「贈る言葉を歌います・・・」
金八先生の主題歌・・・「贈る言葉」
伴奏のテープを流す前に、無伴奏で歌が始まった。
「暮れ~なずむ街の~光と影のなか~去りゆくあなたへ贈る言葉・・・悲しみこらえてほほ笑むよりも 涙枯れるまで泣く方がいい・・・」
わずかに震える声だが、透明感を感じさせる見事な程美しい声だ。
チエのほほに、わずかだがキラリと輝く白糸が見えた。
「人は悲しみが多い程・・・」
突然、クラス全員がチエと一緒に歌い始めた。
まさか、このクラスにこんなまとまりがあるとは・・・驚きだった。
チエの障害はみんなしっている。
彼女の苦悩は、小学生の頃からみんな見ている。
そんなチエの勇気にリードされ、クラス全員がひとつになって歌い始めたのだ。
綺麗ごとや正論ばかり口にしていながら、クラスをまとめきれない自分とは雲泥の差だ。
これが「心をひとつ」にすることなのか。
生徒たちも、本当はドラマのように感動したり共感したりしたかったのかもしれない。
素直になれず、荒れたり、非行に走ったり、勝手気ままに学校生活を送っていても、本当は満足していないんだ。
こうして、互いに励まし合い、支え合いたいのだと思った。
チエの歌声は、彼らのそんな思いを素直に表現できるきっかけとなった。
勿論、私自身が一番素直になれたのかもしれない。
ノブコたちの勇気がチエに勇気を与え、チエの勇気がクラスのみんなに「素直になる」という勇気を与えてくれた。
それぞれが人生というトラックの中で、勇気というバトンを渡しあっている。
勇気というバトンを手にした見事なリレーを感じた。
「勇気」それは、与え続けて初めて手にできるものだということを知った。
果たして私は生徒たちに勇気を与えることができるだろうか?