「人間は、本来誰だって人から好かれたいと思っている。
周囲の人たちから好かれて嫌な気になる人はいないだろう?
ところが、知らず知らずのうちに、好かれたいという要求の方が強くなって、自ら相手に対し好意を提供することを忘れてしまうのも人間なんだ。」
タツジに話をしながら、自分のことを振り返っていた。
「好意が欲しかったら、最初に好意をプレゼントすればいい。
愛されたかったら、自ら目の前の相手を愛すればいい。
どうだ?言われてみれば、簡単だろう?」
タツジに話しながら、果たして自分はそうしているだろうかと疑問に思った。
「愛情を伝える術はいろいろあると思う。例えば、タツジを殴ったことを肯定する訳じゃないけど、その行動にどんな思いがあるかってことが、大切だと思う。
タツジが、カツアゲされていた1年生を助けたのも、手段は別として、助けられた1年生にとってタツジはヒーローだと思うよ。」
タツジを殴ったことを正当化しようとしていた自分がいた。
「タツジと出会って、今のタツジの表情が最高にやさしさに満ち、愛おしささえ感じる。
つまり、今のタツジからは、優しさという安堵感を貰っているので、私も心が穏やかになれるし、素直の気持ちになれるんだ。」
一瞬、タツジがはにかんだ表情をしたが、じっと黙って聞いている。
「タツジはクラスのみんなが好きか?」
「うん」 小さくうなずいた。
「そうだよね。だってクラスのみんなは、誰ひとりタツジを恐がっていたり特別扱いしていないよね。
ヨウコが言っていたよ。タッッチャンは、クラスの仲間には威張ったり、脅したりしたことが無いって。
クラスのみんなもタツジには、普通に接しているだろう?」
「うん。まぁ」
「それをこれからは、教室以外でもすればいいんじゃないかな?」
なんとなく綺麗事をいっている自分がいた。
言葉にするのは、簡単だ。
しかし、タツジが今までの経験から培われた大人たちへの不信感を払しょくするのは、そう簡単なことではない。
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