「生きてさえいれば・・・・」

そんなことなど、一度も考えたことも、感じたこともない若者の

人生を大きく変える話を聞くことになる。

そして、ジュンイチの母親が話し始めた。

「ジュンイチが自閉症だから自殺しようと思ったのではありま

せん。」

きっぱりと否定した。

「あの子が自閉症と診断されたのは、3歳の時です。

他の子と比べて、変だとは気づいていたのですが、ちょっと

覚えが悪く、遅れているだけと、自分に言い聞かせていました。

でも、何度同じことを言っても、反応が鈍く、伝わっていなようの

気がしてきました。これは変だとはうすうす感じていましたが、

親としては、他の子と異なることを認めたくなかったのです。」

頷くしかなかった。

「一番つらかったのは主人からの罵声でした。

主人は商社マンで、全国を飛び回っていたので、子育ては、

すべて私にまかせっきりです。

ジュンイチの様子を話すと、いつも決まって、おまえの躾が

悪いからだ。・・・・・事あるごとに、叱責され続けました。

ジュンイチの行動を逐一報告すると、話を聞こうともせず、

一方的に、怒鳴り散らし、ああしろ、こうしろ、母親なら、母親

らしくしろと・・・私の悩みなんて聞こうともしません。

主人は、世間でいう有名大学出身で、男の子が産まれたら、

自分と同じ大学に行かせると、口癖のように言っていました。

でも、言葉をなかなか覚えないジュンイチにも辛くあたり、

ある時、俺の子じゃないだろう・・・なんて、本気じゃないと思い

ますが・・・・ショックでしたね・・・

それからは、誰に相談すればいいのか分からず、主人が出張

の時は、台所で泣きながらついお酒を飲むようになってしまい

ました。」

こんな家庭の事情を23歳の若者に話すのかぁ・・オロオロした。

どう反応すればいいか分からなかった。

「悩みを相談する相手もいないので、学生時代の親友が遊びに

来た時、ジュンイチの話をしたら、自閉症の親の会のことを、

紹介されました。ワラをも掴む思いで、すぐに電話をし、

そこで、初めて私の悩みや苦しみを共感してくれる人に出会い

ました。」

品格に満ちたジュンイチの母親からは、想像もできない話だった。

「最初に言われた言葉は一生忘れられません。

なんていったと思います?」

いやぁ~・・想像もできない。

「おめでとうございます。良かったですね。

お子さんは、神様からのギフトですよ・・・・・

信じられますか?私も一瞬何を言っているのかと、

耳を疑いました。 おめでとうなんて・・・・」

さらに神様からのギフトの話が続いた。

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