【赤字のお仕事】
エスワティニ、ジョージア、アメリカ合州国… さて、どこのことでしょう?

 

 ある日、記事中に「スワジランド」というアフリカの国の話題が出てきました。実は先日、スワジランド国王のムスワティ3世が建国50周年の記念に国名を「エスワティニ」に変えると発表していたのです。「スワジランド」はかつての英国領時代に英語で「スワジ人の国」という意味でつけられた国名であり、現地のスワジ語表記の「エスワティニ」に戻すということでの発表でした。

 また、英語表記の「Swaziland」も問題になっていました。スイス連邦の英語表記である「Switzerland」とスペルが似ているため、混同してしまうことがよくあったからです。

 それを受けてどのように表記するかが話題になり、結局「スワジランド(エスワティニ)」という表記に落ち着いたのでした。まだ国名変更が発表されただけであり、国連はじめ国際社会的に受け入れられたわけではないというのが理由です。日本の外務省のサイトを見ても、今のところ「スワジランド」のままです。

 このような国名変更で思い出すのが、先日も当コラムで取り上げた「ジョージア」です(『【赤字のお仕事】4月は年度も替われば名称も変わる 名称も変われば略称も変わる?』。平成30年4月23日)。これは現地政府が国名を変更したためではなく、日本国内における変更でした。

 

 もともとの国名である「グルジア」は、旧ソ連時代のロシア語での名称でした。旧ソ連崩壊に伴う独立の際、「グルジア」の英語読みである「ジョージア」になりました。日本政府がロシア語読みを使い続けていたところ、再三にわたる要請があり、日本でも「ジョージア」表記になりました。ちなみに現地語(ジョージア語? グルジア語?)では、「サカルトベロ」という全然違う名前になるそうです。

 国名の話でもう一つ。「アメリカ合衆国」は「ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ」を日本語に翻訳した国名ですが、これは誤訳であり、正しくは「アメリカ合州国」である、という説があります。

 「ユナイテッド・ステーツ」は直訳すると「一体化した州」です。また、「ステート・オブ・カリフォルニア」は「カリフォルニア州」と呼ばれ、「ステート・オブ・ニューヨーク」は「ニューヨーク州」です。つまり「ステート(ステーツ)=州」が一体化した国だから「アメリカ合州国」が正しい、という意見なのです。

 一般に使われている「アメリカ合衆国」側の肩を持つこともできます。日本と米国が関わりはじめた幕末の頃、一人一人が平等に権利を持っていて国民全員が政治に参加できる米国型の民主主義は、日本を含めた世界全体から見るとまだ少数派で、「大衆」が一体化して成立している国であるという当時の米国独自の体制を端的に表すために、「アメリカ合衆国」という表記を採用した、という意見もあります。

 「がっしゅうこく」の表記は、米国だけの問題ではありません。メキシコも、日本での正式名称は「メキシコ合衆国」です。「合衆国」が誤訳だとすると米国だけでなくメキシコにも問題は波及します。

 さて、勘の鋭い方はお気づきかもしれません。ここまで私は、カギカッコの中では「アメリカ合衆国」ないしは「アメリカ合州国」としていますが、地の文では「米国」としています。そう、新聞紙面では「アメリカ合衆国」は「米国」表記のため「州」か「衆」かなどといったことは、ほぼ問題にならないのです。

 新聞校閲に関する話題を扱わなければいけないにもかかわらず、半分近くは関係ない話題になってしまいました。ここまでお読みになった方の時間を無駄にしてしまったことを深くおわび申しあげます。(陽)