【赤字のお仕事】
「脱走」か「逃走」か 故障と「たたかう」は「戦」か「闘」か いろいろ悩んだ末…
最近、記事の表現・表記で同僚から質問されたことがあります。
最初は、以下の記事の見出しについて。
「愛媛県今治市の松山刑務所大井造船作業場から受刑者が脱走した事件で、広島県警は(4月)30日、JR広島駅近くの広島市南区の路上で容疑者を発見し、逃走の疑いで逮捕した。脱走から23日目。愛媛県警が逃走と窃盗容疑で指名手配しており、今治署へ移送した。両県警や捜査関係者によると、『広島県尾道市の向島で、空き家などの食料品を食べて潜伏し、海を泳いで本州へ渡った』という趣旨の供述をしている(以下略)」
この記事には、「脱走受刑者 広島市で逮捕」という主見出しの脇に「逃走23日 『海泳いで本州へ』」と少し小さめの見出しが付いていました。
尋ねられたのは「逃走23日」という見出しの「逃走」は「脱走」でなくてもいいのか? そして、「23日」は「23日目」としなくてもいいのか?
といったことだったように思います。
辞書を見ると、逃走は「逃げ走る、逃げさること」、脱走は「(とらわれている所やいるべき所から)抜け出して逃げること」と記してあります。
ついでに「逃走罪」とは、「受刑者、勾留されている者などが刑事施設から脱走する罪」ということです。脱走はその直後のこと、その後は行方をくらまして警察の捜査から逃げていたので、「逃走」にも違和感はありません。
一方、日数の件ですが、受刑者の脱走が発覚したのが4月8日夜で、広島で警察官に捕まったのが30日の昼前ですので、確かに脱走からは23日目となります(「○○日目」は起算の日を含めて数える)。
ただ、丸々というわけではありませんが、23日間逃げ回っていたわけですから、「23日目」などとせずに、「逃走23日」でも問題ないようです。
また、主見出しに「脱走受刑者」とあるのですから、脇の見出しに「脱走」などと付け足す必要も、特にありません。
いろいろと考えた末、この見出しについてはこのままでいいのでは、と結論付けました。
もう一つは新三役に昇進した関取で、新入幕の後、何度も重いけがをしたと書いてある記事の中に「故障との戦い」とあり、「戦い」と「闘い」のどちらの表記がよいか、というものです。
「戦い」は戦争・勝負・競技、競争相手と優劣を争う場合に使います。
「闘い」は闘争・格闘、利害・主張の対立で争う、困難などに打ち勝とうと努めるときに用います。
こういった判断に迷うときは、一般用語である「戦」か平仮名にすることが多いのですが、弊社の用語集『産経ハンドブック』の用例には「病魔との闘い」というものがあり、この記事の「けが」は病気と同じと考えてよいか、どうしようか、ということでした。
結局、記事の中にある「困難などに打ち勝とうと努める」という表現をよりどころに、故障との「闘い」に直しました。
この質問をされた日は、通常業務ながらいろいろ忙しかったので、もしかすると、答え方に丁寧さを欠いたのでは、と反省しています。それで、この「赤字のお仕事」で(補足説明として)書かせてもらったのですが、質問をした彼らは、果たしてこれを読んでくれるかな?(い)