友人の妹が急死した。
44歳だった。
心臓発作だった。
呼吸がしにくくなり、ユダヤ人の救急車を運営する団体、ハツァラを呼んだ。ハツァラが到着すると、自分の足で歩いて、救急隊員に状況を説明しながら救急車に乗り込んだそうだ。そして、病院へ行く途中、救急車の中で亡くなった。
救急車に乗り込む際、自分がもうこのまま帰ってこないとは、本人も思っていなかったと思う。
彼女には、2歳、8歳、そしてティーン~20代まで、6人の子供がいる。こんなに幼い子供を残して、誰も死にたくなかっただろう。
一人娘を亡くしたご両親、妹を亡くした私の友人、亡くなった彼女の旦那さん、そして子供たちのことを思うと、涙が止まらない。
子どもの一人が海外へ留学しているため、お葬式は、彼が到着するのを待って行われた。それから、ユダヤ教ではシヴァと呼ばれる喪に付すことが7日間。その際、友人は彼らの家を訪れ、家族にねぎらいの声をかけ、故人を偲ぶ。
亡くなった知らせを受けて、すぐに友人にテキストを送った。きっとバタバタしているだろうから、こういうときは、電話するのは控えるようにしている。
「なにか、できることがあれば伝えてほしい」
とメッセージを送った。返事はなかった。
次の日、共通の友人からメッセージがきた。
「彼らのために、ミールトレインを設定したので、協力できる人はリンクから登録してください」
とのことだった。
ミールトレインとは、アメリカでは定着している助け合いのことで、産後の家族や不幸があった家族などに、ご飯を届けてあげることを言う。
このミールトレインに、誰に、何日から何日まで、何人分、どんな食事が必要なのかを登録し、友人に拡散する。メールを受け取った友人で、ご飯を届けられる人は、何日のどのご飯を届けられるのかを選んで、自分の名前を登録する。そして、自分で作ったご飯でもいいし、出前でもいいし、選択した日にご飯を届ける。
ご飯を、つながった車両のようにみんなで送り続けるから、「ミールトレイン」と呼ばれるのだ。
早速、初日のディナーのミールトレインに登録した。
ユダヤ教では、誰かが亡くなると数時間から次の日、今回のように遠方に家族がいるときは、彼らの到着を待って、遅くとも2日後にはお葬式が行われる。
この間、彼らは肉を食べるのを避けるので、この日のミールトレインは、近くにあるコーシャーのお寿司屋さんから、サーモンロールなどいくつかの巻き寿司を買って届けた。
このミールトレインは、本当に素晴らしいな、といつも思う。
人生の大きな出来事に直面している家族は、ご飯の手配を考えずに済むからだ。
私も出産したとき、友人がミールトレインを一週間に渡ってやってくれたので、毎日誰かがご飯を届けてくれて、本当に助かった。
日本の友人の父親が亡くなったとき、アメリカから出前を手配して数日間届けた。友人のお母さんから、「本当に助かった。こういうときは、何も考えられないし、食べられない。だから、ご飯を届けてもらえて本当に助かった」
と言われた。
それに、誰かが亡くなったときというのは、「なにかしてあげたいけど、何もしてあげられない」という状況に陥る。
慰める、側にいる、話を聞く。。。他になにができる? どう助けてあげられる? 力になってあげられる??
そう思っても、何もしてあげられない。
だから、ミールトレインは、こうしたもどかしい無力な気持ち、でも、力になりたいという切ない気持ちを、せめて埋めてくれるものでもある。
お葬式の今朝は、すごい雨が降っていた。お葬式や終わった頃に、雨が止んだ。
亡くなった彼女が、泣いているのだろうと思った。
Baruch dayan emet.