こんにちはニコニコ


筒井康隆の『ロートレック荘事件』をご存知でしょうか?飛び出すハート

かなり昔の作品で、筒井康隆先生にしては珍しい推理小説です

若かりし日の筒井康隆先生

テレビもよく出てましたね照れ



私はロートレックも好きだし、何より推理小説としては破格の短さ爆笑!に惹かれて読んでみましたが、かなり面白かったですひらめき愛

ストーリーは
『夏の終わり、郊外の瀟洒な洋館に将来を約束された青年たちと美貌の令嬢たちが集まった。ロートレックの作品に彩られ、優雅な数日間のバカンスが始まったかに見えたのだが…。二発の銃声が惨劇の始まりを告げた。一人また一人、美女が殺される。邸内の人間の犯行か?アリバイを持たぬものは?動機は?推理小説史上初のトリックが読者を迷宮へと誘う。前人未到のメタミステリー』
というもの指差し

ロートレックにちなんで、主人公は事故で下半身の成長が止まってしまった若い男性


(ロートレック Wikipedia)

ロートレックは遺伝疾患と、足の骨折が重なり、14才で下半身の成長が止まってしまったのだそうぐすん

ロートレックの一族は貴族の家柄だったこともあり、身分にこだわって近親結婚を繰り返したせいで遺伝疾患が出ていたのだとか…ガーン
実際、ロートレックの両親も従兄妹同士というひどい血の近さです

それなのに、ロートレックの父親は障がい者になった息子を軽蔑し(なんでやねんムキー!お前のせいでもあるやろ)、金はふんだんに与えたもののロートレックの絵の才能もバカにして最後まで認めていなかったとか…凝視

まったく、バカはどっちだって話ですよねムキー

確かにロートレックは、当時安っぽいとされて見下されていた商業絵画(ポスターなど)も気にせずに引き受けてドンドンこなしていたそうなので、権威主義の父親からしたら、息子はただの三文イラストレーターくらいにしか思えなかったのかもしれません

でも、どんなに美的センスのない人間が見ても、ロートレックの作品ってたぶんインパクトあって、お洒落で素敵ですよねえチュー飛び出すハートキューン

上っ面ばっかり気にして、貴族だなんだとふんぞり返って、目の前にあるものの本質が全く見えない俗物だったんでしょうね、ロートレックパパネガティブ


(キャバレー、ムーラン・ルージュの支配人と一緒に)

今より障がい者の地位が圧倒的に低かった時代に、こんなにわかりやすいハンデを背負わされて生きたロートレック悲しい
どんなに大変だったことか、この写真をみるだけでも胸が痛みます

さて、そんなロートレックと似た境遇の主人公も、幼い頃は、兄弟で貿易商を営む父を持つお坊っちゃまで、郊外の瀟洒な別荘でよく過ごしていました

実は、彼にこの別荘で障がいを負わせる事故を起こしたのは、父と共に貿易業を営んでいた兄弟の息子、つまり、主人公にとっては従兄弟に当たる人物です真顔
と言っても悪気のない純粋な子ども同士の事故、ケガを負わせた従兄弟はもちろんひどい罪悪感に苦しみ、「一生どこにでもついて行く、一生君の世話をして守る、一生君から離れない」と泣いて誓い、その通りに実行します

そうして2人が28才になる頃には、父親たちの事業はとっくに破綻、別荘も手放してしまい、現在では美術関係の仕事で成功して経済的に潤い、なんとマスコミの注目も集めたりしていますニコニコ飛び出すハート

そんな折り、かつての彼の別荘を買い取り、趣味でヨーロッパ各地から集めたロートレックの絵画を飾りつけている新オーナーから、「ぜひ別荘に泊まりがけで遊びにいらっしゃいませんか」と誘いがかけられる

実はこのオーナーには年頃の娘がおり、この誘いの裏には、有名人で金持ちになった男性に娘との結婚話を持ちかけようと言う思惑があったのですキメてる

それでも、それを知りつつ、懐かしさから別荘へ出かけていく主人公たち花

他にももう1人の美貌の令嬢、その母親(この人も娘を押しつけたがっている)、その友人で可愛らしい娘、オーナーの会社の社員などが加わり、全員様々な思惑を隠しながらも表面上は和やかに時間は過ぎて行きます

しかし、突然、その平和な洋館に2発の銃声が鳴り響き、ひどく奇妙な連続殺人が幕を開けるのです…グラサン



さて、この小説の舞台になる別荘ですが、外観や構造が、この岩崎邸に似ているなあと思いましたニコニコ

この玄関ポーチの感じとか

2階がバルコニー式回廊で繋がっているところとか

この裏口の階段の感じとか、私的にはこういう洋館のイメージチュー

素敵~ラブ飛び出すハートキューン

もちろんいろいろ異なっている所はありますが、雰囲気はこういう感じかなあ、と





そして、この洋館にオーナーが買い集めたロートレックの絵画が飾られていますラブ
そのため、この別荘は今では「ロートレック荘」と呼ばれるようになったのです

ロートレックの絵は、館の中心となる食堂(ホール)、それから各自の部屋に掛けられています

いいなあニコニコ飛び出すハート
こんな別荘、泊まりたいですよねえ

やっぱりセレブになったら、こんなお誘いがたくさん来るのだろうか?…キメてるワクワク(妄想)




それにしてもロートレックの描く女性って、みんな綺麗じゃないですよね笑い泣き

体のコンプレックスから、売春婦たちとばかり関係を持っていたと言うロートレック

彼女たちに共感し同情していたと言いますが、その割に彼女たちを描いた絵はかなりグロテスクです
内面の醜い面ばかりが強調されているような表情が多い

体を売る無教養で下品な女性たちを、深く愛して共感しつつ、軽蔑し憎んでいたのかもしれませんショボーン
愛と憎しみは同じもの、って言いますもんね

そして、話を小説に戻すと、トリックや、犯行の経緯なども面白くて満足のいくものでしたが、やはり圧巻は犯人でした‼びっくり

かなり驚きます

「そ、そ、そ、そういうことだったのか~‼」、とチュー

この前読んだ『予言の島』ともちょっと印象がかぶりました

「⁉…あ、あ、あ、あんた、おったんかいっ~⁉」と言う驚き不安

そして、読み終わってからもう1度読み返したくなるような見事な叙述トリック愛

本自体が薄くて、2時間ちょっとで読み終わったのですが、長編読んだような満足感でした口笛

ほんとに筒井康隆先生は…頭がいいよなあ…(バカな感想看板持ち)音譜

犯人の動機も、読者の盲点をついてきますキョロキョロ

でも知ってみると、とてもよく共感できる動機です…真顔
なるほどなあ…切なすぎる…でもわかる…わかるよ…不安

ちょっと喫茶店に持っていって読了するのにお勧めの1冊でした📕☕ニコニコ


ロートレックは実はゴッホと仲が良く、一緒に個展やったりもしてたらしいびっくり

全く知らなかった…‼

ゴッホは周りの人間全員とモメていたような偏屈野郎ですが、ロートレックとはけっこううまくやってたらしい(あと弟のテオ)
テオは穏やかで人格者だったと言いますから、ロートレックもとても優しい人だったんだと思います
でなければ変人ゴッホとうまくやれませんから

(↑上はロートレックが描いたゴッホ。なんかアクの強いゴッホに混乱させられたのか、画風が100%ゴッホ風タッチになっちゃってます泣き笑い)


SOMPO美術館で、ロートレック展も開催中だそうひらめき飛び出すハートキューン

ぜひ行ってみたいなあニコニコラブラブ

若くしてアルコール中毒と梅毒を患い、実家に戻って静養中に36才で亡くなってしまったロートレック悲しい

最後の言葉は、自分をバカにし続けた父親に向かって放った、「この愚かな老いぼれめ」だったそうぐすん

死後100年経っても、いまだに世界中で展示会が開かれるほど優れた芸術家なのですから、やっぱり父親が間違っていたことを立派に証明してみせましたよね

でもロートレックがずっとずっと一番認めて欲しかったのは父親だったんだろうなあ…

とても切なくなる臨終のエピソードです泣くうさぎスター