遅めに目覚めた彼はカーテンを開けた。窓から見える空は一面の曇り空だった。
昨日までの大雪で建物の屋根や木々、歩道に至るまで白い塊は未だに融けず残っている。再度空を見上げると、切れ間もない曇り空だがそのすぐ上には太陽の光があるのだろう。暗くはなく、部屋を程よい明るさで覆った。寝室を出て、リビングへと入りTVをつけ、ニュースと天気予報をぼうっと眺めた後、彼はリビングを抜けた右側にある洗面所へと向かった。彼は蛇口をひねり、水を手で受け止めて顔を洗った。冬の最中の水はとても冷たく、一瞬で目が覚めた。
彼はリビングに戻り3人掛けのソファーへ腰を沈めた。革製の低めのソファーだ。目の前にはガラス面の程よい大きさの木製のダイニングテーブルがあり、昨晩飲んだタンブラーと灰皿、そして読みかけの本が置いてある。今日は仕事が休みのため、ゆっくりめの起床になった。
予定は特に入れていない。昨日までの雪のせいで出かけるのも遠慮がちになってしまう。
ランチはパスタでも茹でて簡単に済まそうかと考えている。
彼がふとカレンダーに目をやると、今日は第3日曜日であることに気が付いた。毎月第3日曜日には繁華街から1本路地に入ったところでニューオリンズJazzのバンドがライヴをする。特別用事が無いときにはふらっと立ち寄り気分を高揚させるのが好きだ。彼の予定は決まった。
パスタを茹で、ランチを済ませたらシャワーを浴びて出かける。時間的にはライヴまであるはずだから向かう途中の本屋へ立ち寄り、本を買おう。その後は本屋の先にある商業ビルの2階にある中古カメラのショップへ寄る。フィルムカメラを眺め、持った感触をイメージする。店を出たら近くのコーヒーショップでウィンナーコーヒーを注文する。そして買った本を読みながらコーヒーを飲み終える頃に店を出て路地裏へ向かえば、丁度いい時間のはずだ。
そこまで考えて彼は目の前にあるタンブラーを手に取り、ダイニングからキッチンへ入り軽くグラスを濯いだ。
グラスにアイスを入れ、彼は棚からBOMBAY DRY ZINのボトルを手に取った。感覚でZINをグラスに注ぎ、ライムコンクを少量入れ、冷蔵庫から冷えたトニックウォーターを取りだしグラスに流し込む。人差し指で軽くアイスを混ぜ、彼はリビングへと戻り、ソファーへ腰を落とした。煙草を口にくわえ火を着つけ、彼はグラスのジントニックを一口飲んだ。窓から見える空は変わらず一面の雲の覆われ、差し込む明かりは目の前のテーブルを越えてソファーに座った彼の太もも辺りまで届いていた。