彼は昨日の夜、眠りに着く前読んでいた本の事を思い出していた。何故、その結末だったのか。その結末でなくてもよかったのではないかと考えていた。結末はいくらでもある。著者はなぜ、その結末を選択したのか。
話はこうである。
同じ会社ではあるが、部署が違うために出会うことのなかった2人の女性が、同じ男性をきっかけに知り合う。内容はあくまで簡潔にするが、2人の女性は気が合い数度目の食事をした後、一緒に旅に出る事にする。3泊の旅行を立て、会社から互いに休みをとり2台の車で旅に出る。
どこかは知らないが温泉旅館の部屋をとり、そこへたどり着く。
互いにこれからの旅路を楽しみにしているが、片方の女性が体調を崩す。風邪だと言い、いつも突然風邪をひくと言う。少し休むといった彼女は次第に熱が上がり、動けなくなる。
予定の1泊ではなく、結果3泊をし、医者にも診てもらい次第に体調は改善していった。
彼女は自分の乗ってきた車を置いたまま電車で帰宅する。
一方の彼女は週末を過ごし、月曜日に彼女の内線へと会社で連絡を取るも不在との返事であった。数日して再度連絡した彼女への返答は体調を崩した彼女は退職になったとの知らせだった。
その後、数日経ち、再度連絡を試みた彼女への返答は、「亡くなりました。」との答えだった。
物語の結果としては、体調を崩した彼女は回復し、帰宅するも、再度体調を悪化させ、意識がないまま家族により病院へ運ばれるもそのまま死去したとの顛末となる。肺炎を悪化させたことが原因として綴られている。
短い短編小説であったが、読んだ彼の中には残るものがあった。それが著者の作為的な事かは知らないが、とにかくこの話は彼の心に、寂しさと屈折した疑問を残した。
おそらく、そのまま話を受け止めて次の章へと進めればよかったのであるが、何故この結末にしなければいけなかったのか。と彼は思ったのだ。
仲良く休みを過ごし、戻って仕事をして、この女性2人が恋仲に落ちるという話でも良かったはずである。
それでも読者としてはミステリアスで面白い作品になっていたと思う。
でも、それをせず、非現実の小説から彼女の存在を消し去った。
確かにその事で彼の心や記憶の中に残る作品であった事に違いは無いが、彼の中にはそれが現実のことであるような、ある意味錯覚を覚えさせ、結果として彼はこのストーリーの何処か端の方に妄想的に登場する人物になっていることに気付いた。