今回の制裁は、2026年8月18日にトランプ政権がICC(国際刑事裁判所)の幹部2人を米国の制裁対象に追加したものです。米財務省も正式にSDN(特別指定国民)リストへの追加を公表しています。  


対象になったのは、赤根智子(あかね・ともこ)ICC所長と、セネガル出身のアブドゥライエ・セイ上級法務官です。赤根氏は日本人判事で、現在ICCの所長を務めています。セイ氏はネタニヤフ氏を巡るICCの手続きにも関与している人物です。  


背景にある最大の問題が、ICCが2024年にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と当時のヨアブ・ガラント国防相に逮捕状を出したことです。ガザでの戦闘をめぐる戦争犯罪・人道に対する犯罪の疑いが理由でした。一方、イスラエル側は आरोपを否定しています。  


ここで米国側が強く反発しているポイントがあります。米国もイスラエルもICC加盟国ではありません。 トランプ政権は、「ICCに加盟していない国の政府高官をICCが勝手に捜査・逮捕・起訴する権限はない」という立場です。ルビオ国務長官は今回の2人について、ICCの管轄権に同意していない国の政府関係者を捜査・拘束・訴追しようとする活動に直接関与したとして制裁理由を説明しています。  


制裁はかなり実務的に重いです。米国の制裁リストに載ると、米国内にある資産や米国人の管理下にある資産が原則凍結され、米国人・米企業との取引も大幅に制限されます。 ドル決済を含む米金融システムへのアクセスにも大きな影響が出ます。今回、米財務省OFACが赤根氏とセイ氏を正式にSDNリストへ追加しています。  


そして、これは突然始まった話ではありません。トランプ大統領は2025年2月6日、ICC関係者への制裁を可能にする大統領令14203号を発令しました。その大統領令ではネタニヤフ氏らへの逮捕状を名指ししてICCを批判しています。その後、ICCの検察官や判事らへの制裁を段階的に拡大してきました。  


さらに最近のトランプ政権は、個人への制裁だけでなく、ICC加盟国に対して脱退を促す外交圧力まで強めています。 つまり狙いは「ネタニヤフ逮捕状を撤回させる」という一点だけではなく、ICCが米国やイスラエルなど非加盟国の人物を訴追できる現在の仕組みそのものを変えさせる方向に進んでいます。  


当然、ICC側は真っ向から反発しています。ICCはこれまで米国による制裁を、裁判所の独立性や国際司法制度を脅かすものだと批判してきました。また人権団体なども米国内でトランプ政権を提訴しており、「ICCとの協力まで制裁対象になるなら、言論や人権活動を萎縮させる」と主張しています。  


ですから今回のニュースを一言でまとめると、


「トランプ政権 VS ICC」の対立が、ネタニヤフ氏の逮捕状をきっかけに、ICC所長本人への経済制裁にまで発展した


という状況です。


しかも今回制裁されたICC所長の赤根智子氏は日本人です。ここは日本外交にとっても無関係ではありません。

米国の同盟国である日本は同時にICC加盟国でもあるので、かなり難しい立場になります。今後、日本政府がこの「日本人ICC所長への米国制裁」にどう反応するのかは注目ポイントです。