海を前にすると、ただ景色を眺めるだけではなく、

「この海の向こうに、どんな歴史や物語があったのだろう」

と、思いを巡らせるものではないでしょうか。


とくに『源氏物語』の光源氏をテーマに旅をしているのなら、

なおさら――

「このあたりに光源氏がいたのだろうか」

「同じ海を見ていたのだろうか」

そんな想像を重ねたくなるはずです。


徳島の海は瀬戸内海。

古来、多くの人や文化が行き交い、文学にも描かれてきた穏やかな内海です。

静かな水面を見ていると、千年前の都人の心の揺れまで届いてくるような、不思議な感覚さえあります。


だからこそ、

江戸時代から演じている歌舞伎役者が

その海を前にして別の海の名が

出てきたと聞くと、

少し拍子抜けしてしまった――

そんな気持ちになりました。


海はただの水の広がりではなく、

土地の記憶そのもの。物語の舞台でもあり、人々の暮らしの積み重ねでもあります。


同じ海を見つめ、同じ風を感じながら、遠い時代に思いを馳せる。

本来、そういう時間こそが

「源氏の旅」の醍醐味なのかもしれません。