土曜日の日経夕刊に連載されている文学周遊を毎回楽しみにしている。先々週は、藤澤桓夫の大阪自叙伝の特集だったが、なんば南海通りの行きつけの波屋書房が舞台になっていて興味深かった。波屋書房に通い出したのは、30年前くらいからだろうか。書店の中央に番台のような一段上がったレジがあって店主の娘さんらしき方が絶世の美女だった記憶がある。いつのころか料理書専門店のようになったが難波に行くとついつい立ち寄ってしまう。今はなき天王寺のウニタ書店と並んで大好きな本屋さんだ。さて創業者は大阪在住の作家を手助けしてきたようだ。先代の店主は織田作之助の神経という小説にも登場する。「戎橋筋の端まで来て、私は南海通へ折れて行った。南海通にもあくどいペンキ塗りのバラックの飲食店や闇商人の軒店や街頭賭博屋の屋台が並んでいて、これが南海通かと思うと情けなく急ぎ足に千日前へ抜けようとすると、続けざまに二度名前を呼ばれた。声のする方をひょいと見ると、元「波屋」があった所のバラックの中から、参ちゃんがニコニコしながら呼んでいるのだ。元の古巣へ帰って、元の本屋をしているのだった。バラックの軒には「波屋書房芝本参治」という表札が掛っていた。」。波屋書房に行くと隣でオダサクが立ち読みしている錯覚に陥る。
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