2001年の同時多発爆破事件のころから世界は非対称の時代に突入したと言われる。組織された巨大正規軍対ゲリラ部隊の非対称戦争、情報の寡占化を指称する情報の非対称性など、その非対称性なる言葉のイメージは本来、巨大マンモスにくらいつく原始人のようなものであったが現在語られている非対称性なる意味合いは若干異なるように思われる。そもそも、有史以来、対称性のある世界など存在しなかったのではないか。社会、国家が存在する以上、非対称性はその属性とも言いうる。非対称性の今日的変容を一言で言うならば、非対称の一方をテロと通称するメディアの言説なのではなかろうか。ベトナム戦争の際にベトコンの戦闘をテロと呼ぶことはあっただろうか。冒頭、同時多発テロ事件と呼ばずに同時多発爆破事件と呼んだのはその所以である。