『センター・オブ・ジ・アース』エリック・ブレヴィグ監督 | 無料カタログ

『センター・オブ・ジ・アース』エリック・ブレヴィグ監督

 いよいよ今週末日本で初めての公開となる、全編3-D映画『センター・オブ・ジ・アース』。え! ディズニーシーの人気アトラクションが映画に!? いやいや、映画はさらに不思議な別世界へ観客を連れ出してくれるのだ。本作を手がけたエリック・ブレヴィグ監督は、ディズニーランドの「キャプテンEO」や「ミクロアドベンチャー!」を手がけた、ハリウッド3-D映画の第一人者。公開直前、本作の魅力をご本人にレクチャーしてもらおう。


誰もが初体験の92分間のノンストップライドを


 本作で監督デビューしたブレヴィグ監督。これまでも『メン・イン・ブラック』や『パール・ハーバー』をはじめ、数々の作品の視覚効果監修を手がけ、『トータル・リコール』ではアカデミー賞視覚効果部門特別業績賞も受賞。映画のすべてを指揮する監督のポジションに、新たな映画の発見は?


 「初めて味わった楽しさはふたつありました。ひとつは俳優さんととても身近なところで一緒に仕事ができたこと。俳優さんがいちばん気になる、撮影時にない3-DやCGの部分の情報を絵コンテやビデオで提供して、俳優さんが2-Dと同じく、自由に芝居ができる環境を作ることができました。そのやりとりが非常にうまくいったので、撮影中はキャストもスタッフも、みんながハッピーでした(笑)。もうひとつは、ストーリーのアイデアを自分で作れたことです。特にアクションのシークエンスを作っていく作業は、ワクワクしましたね!」


 最新技術を駆使した映画の原作に “冒険の父”といわれるジュール・ヴェルヌの19世紀のSF古典小説「地底旅行」を選ばれた理由とは?


 「新しいテクノロジーを使って映画を作ろうと思った時、登場人物たちが旅に出て、いろんな経験をしてゆく冒険物語はとてもぴったりくる素材なんです。中でも、ヴェルヌの『地底旅行』はキャラクターたちに思い入れを込められる、パーフェクトなストーリーでした」


 主人公トレバーたちが探検する、地下160キロの地底“地下の大空洞”に広がる有史以前の世界には、絶滅したはずの鳥が飛び交い、凶暴な人食い植物や神出鬼没の恐竜が暴れまわるなど、遊び要素が満載(3-Dのリアルな立体感に、観客も思わず身をよけたり、腕を伸ばしてみたくなる興奮を感じるはずだ!)。監督のお気に入りのキャラクターは?


 「飛びピラニアです(即答)。イヤーな感じの顔で、海から突然飛び出してくるあの恐怖感は、観ている人の経験を思い出させて、怖さを倍増させる仕掛けを考えて作りました。人のスリルを盛り上げるには、いかにその人のこれまでの恐怖体験を思い起こさせるか? に尽きると私は思います。地下に落ちていくトロッコの浮遊感も、意図的にジェットコースターに似た構造を取り入れました。遊園地に行ったことのある観客なら、(上映の)92分間、主人公とともに、興奮と達成感を味わうノンストップライドを体験してもらえるはず(笑)。こんなに長いアトラクションに乗るなんて、おそらく誰もが初めての経験では?」



2-Dと3-Dの映像力には、昼と夜くらいの違いがある!


 たしかに映画を観ているというよりは、テーマパークで遊んでいる時の感覚に近いかも。本作の公開に続き、ハリウッドではピーター・ジャクソン、ジェームズ・キャメロン、ロバート・ゼメキスらの巨匠たちが3-D映画製作を表明している。残念ながら、日本では3-D映像用の特殊メガネの不具合が原因で公開が遅れたが、映画界における3-D化の流れは、スムースに進んでいくのだろうか?


 「もちろんです。2-Dと3-Dの映像力には、昼と夜くらいの違いがありますから! さらに、観客が傍観者ではいられない3-D映画は、登場人物たちの感情と観客との関係性がより強くなるという大きな魅力があります。その分、ワクワク感や悲しみの印象も強まるなんて、刺激的でしょう? また、ホームシアターも増えてきた時代だからこそ、家では観られない3-D映画を観るには、映画館へ足を運ぶしかないという映画館のスペシャル感も生まれますよね? この先も映画がついえることがないと信じれば、3-D映画は映画というものの進化、次なるステップとしても、これから先のスタンダードになると思います。やっぱり映画体験として、映画館の巨大スクリーンで、大勢の人と一緒に観た方がよっぽど豊かな経験になると僕は捉えているんです。メガネが不自由という声も耳にはしますが、今作られている3-D映画のほとんどはファミリー向けの内容。つまり、ハリウッドでは老若男女の誰もが違和感を感じるどころか、当たり前のものとして映画を楽しめているという証拠です」


 最後に、監督の好きな映画を1本教えてください!


 「う~ん。……たくさんあって、選ぶのが難しいなぁ。う~ん、最近はチャップリンのサイレント映画をたくさん観返しています」


 本作にたっぷり注がれた監督のエンタメ精神は、古き良き映画ファンの素養あってこそだとは! これはステキなエピソードだ。さぁ、この映画史的大事件に、あなたもぜひ遭遇してみては?


エリック・ブレヴィグ


1957年生まれ。視覚効果の第一人者として四半世紀にわたって活躍する大ベテラン。『フック』、『パール・ハーバー』、『メン・イン・ブラック』など多くの作品に、視覚効果スーパーバイザーとして参加。『トータル・リコール』ではアカデミー賞視覚効果部門特別業績賞を受賞。また、ディズニーランドのアトラクションとして製作され、3-D映像のさきがけとなった「キャプテンEO」、「ミクロアドベンチャー!」も手がける。本作で待望の映画監督デビューを果たす。


『センター・オブ・ジ・アース』


原題:JOURNEY TO THE CENTER OF THE EARTH/2008年/アメリカ/カラー/ビスタ/ドルビーデジタル・SDDS/92分/2008年10月25日(土)から、日本公開
配給:ギャガ・コミュニケーションズ


出典:Variety Japan