危機管理の視点が欠けていた | JetClipper's Bar

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東京生まれですが、沖縄、多摩ニュータウン、横浜、尼崎、川崎を経て、三鷹市民になりました。

今日発売の週刊ダイヤモンドで宮崎の口蹄疫について第二特集として取り上げている。少なくとも今まで新聞等で追ってきたが、こういう包括的なレポート記事はこういう経済誌の得意とするところだ。

結論から言えば、10年前の口蹄疫の押さえ込みに成功したという成功体験が、この問題のリスク評価を見誤り、強力なリーダーシップをとるべき政治家が県レベル、国レベルで存在しなかった事が一番の問題だろう。官僚が積極的なサボタージュをしたという事実はないだろうが、政治主導という名の官僚の押さえ込みにより、官僚がきちんと仕事が出来る環境ではなかったのではないかという疑問すら出てくる。

今回の特集記事で分かったのは、市町村レベルだけではなく、県レベルでもリスク評価を完全に見誤っていた事。防疫対策も不十分で、道に消石灰を自費で撒いた個人がいたのに、道路管理者である県の担当者が「滑って交通事故が起こりかねない。」と止める様に言ってきたという。どちらが大事なのか。消石灰が撒いて防疫対策になるのならば、速度制限なり方法はいくらでもあるのだ。それを交通事故になるからと止めた管理者は残念ながら、行政官としての資質、まあ、少なくとも複数部署との調整という任には向いていないのだろう。
そういう点では、国に責任転嫁しようとした東国原知事の責任は極めて重い。彼は初動を明らかに誤まったのだ。

勿論国レベルの問題もある。私が前回指摘したとおり、海外旅行者が九州に増えていて、しかもそれは韓国や中国大陸からの人が多いという事実を防疫上の問題として捉えていなかったのではないのだろうか。
また今回のウイルスについて、過去の物より強力であったかのような報道もあったが、前回と毒性も感染力もかわらないそうだ。そういう意味では昨年の新型インフルエンザでの大騒ぎと逆の意味で問題がある。口蹄疫の場合は前回強力な押さえ込みが功を奏しただけで本来の感染力の評価や再発防止策の検討をしっかりしたとも思えない。インフルエンザの場合は、海外からの流入さえ防げば大丈夫という公衆衛生の観点からみてもおかしな対応をしたし、結局その感染力と死亡率は普通のインフルエンザと大きく変わることはなかった。逆に新型対策としてリレンザが使われたことで耐性ウイルスを作ってしまう事になりはしないのだろうか。


いずれにせよ、日本という国は本当に危機管理の出来ない国だという事を強く感じる。
危機管理はリスクを事前に把握し、それに対する対策を事前にマニュアルないし、出来うる対策を先に講じておくことでコントロールできなくなる程のリスクにならないようにする事が肝要。
そういう点では、起こらないように考えていれば起こらないという言霊的な発想が今尚強いのは唖然とする。

まあ、沖縄に駐留する米軍の必要性を総理になって8ヶ月もかかって理解した経営工学の博士号を持つ人もいるのだから。

本来政治家に必要なのはこういうリスクに備えて、国民に無用な負担をかけさせないようにするのがもっとも大事な仕事。つまり安全保障である。農家に金をばら撒く前にこういう口蹄疫をいかに押さえ込むかという対策に金をつぎ込むべきではないだろうか。民主党ではおそらく出来ないだろう。