<脱北者>持っていた液体は「殺そ剤」と話す
北朝鮮を小型船で脱出し青森県・深浦港で保護された4人の一部が同県警の調べに対し、所持していたアンプルに入っていた毒物らしい液体について、「殺そ剤(ねずみ駆除剤)」と話していることが4日分かった。2日の保護直後、4人は「北朝鮮当局につかまったら(飲んで)死ぬつもりだった」と話していた。
県警は各種殺そ剤を取り寄せて成分分析を行っており、数日間で結果は判明する見込みだ。殺そ剤に使われる成分はさまざまだが、毒性の強い酢酸タリウムなら成人致死量は約1グラムという。
一方、4人は4日の事情聴取に対し「日本まで兄弟が交代で船を操縦した。天候が悪く船が揺れ、父母が船酔いした」などと語った。
県警によると、4人は午前7時前に起床し、軽い運動をして幕の内弁当を食べた後、同9時ごろから事情聴取に応じた。聴取の合間には洗濯もしているという。県警は「4人は署内の会議室に泊まっており、食事の提供や衛生面の配慮に感謝している」と説明している
北朝鮮を小型船で脱出し、青森県警に保護された4人は捜査当局に対し、北朝鮮の社会体制への不満や、韓国への亡命希望を記した上申書を提出した。
調べでは上申書はハングルで書かれ、「(北朝鮮では)無力な支配者が社会を後退させていることに疑問と不満を持っていた。生活はだんだん厳しくなった。(息子2人の)将来にも不安を感じるようになった。同じ民族で言葉の通じる韓国に送ってほしい」という内容。4人がそれぞれ直筆で同趣旨のものを書いて提出した。
また4人は「今のままでは餓死するので、皆で出国することを決めた」と供述している。
北朝鮮から日本への入国を求め、昨年末以降、二十数人の脱北者が中国・瀋陽の日本総領事館で保護され、うち9人が今年に入って実際に入国していることが政府関係者の話でわかった。
いずれも在日朝鮮人の日本人妻とその家族で、残る十数人も夏までに入国する見通し。これを含めると、日本に定住する脱北者は約150人に達する。
近年、年間10人程度のペースで推移した脱北者の入国が急増した背景には、高齢化した日本人妻が帰国を強く望んでいることや、現地の生活環境の悪化などがあるとみられ、受け入れ態勢の整備が急務となりそうだ。
複数の政府関係者によると、日本人妻とその家族ら二十数人が、瀋陽の日本総領事館に相次ぎ駆け込んだのは、昨年末から今年初めにかけて。うち9人は今年2月以降、順次、外務省から渡航証明書の発給を受け、中国政府の了承を得たうえで日本に入国した。
2日朝、青森県深浦町で県警に保護された北朝鮮からの脱北者の家族4人が、県警に「日本に知人はいないが、万景峰(マンギョンボン)号が寄港する新潟を目指した」と話していることが分かった。「(北朝鮮では)生活が苦しく、1日おきにパンを食べるのがやっとだった」「4日間は悪天候で海上で船にしがみついていた」などと、北朝鮮での暮らしや日本に着くまでの様子も話しており、県警は入管当局などと連携して、出国の動機や経緯についてさらに事情を聴いている。
4人は2日に続き3日も、県警五所川原署で通訳を介して調べに応じている。県警によると、「5月27日に(北朝鮮の)清津(チョンジン)付近から出港した。濃い霧で周りが見えなかった」と話しており「4日間船が揺れたので、船にしがみついた状態だった。食事も話もできず必死だった」「その途中、何隻かの船とすれ違った」「陸地が見えたのでほっとした」などと海上での様子を話した。
また、4人のうち20代後半の息子は船の操縦資格があり、タコ漁をして一家の生計を支えていたものの「苦労して船を購入したが、生活は苦しかった」と暮らしぶりを説明。50代後半の父親も元漁師で、30歳ぐらいの息子は専門学校に通っていたと話しているという。
父親は日本語と中国語を多少話せるが、ほかの3人は日本語ができず、調べは朝鮮語で行われており、自分の名前などはハングルで書いている。4人は着岸時、多少の人民元を所持し、乗ってきた小型船には衣類、ポリタンクなどのほか、ソーセージなどの食料が積んであったという。
脱北者の4人は3日現在、青森県警五所川原署に保護されているが、警察官職務執行法では、警察による保護は「最長5日」とされていて、7日早朝が期限になる。
このため、法務省は韓国に出国するまでの4人の一時滞在先をどこにするか検討を始めた。
インドシナ難民が続々と日本に漂着した1980年代には、難民が第三国へ出国するまでの滞在先として、長崎県内の「難民一時レセプションセンター」のほか、日本赤十字社や宗教団体が管理運営する国内15か所の一時滞在施設が利用されていた。しかし、現在では同センターは廃止され、民間施設も一時滞在には使われていない。
同省幹部は、「施設を用意する義務が国にあるわけではないが、4人の置かれた状況を考えると、自力で滞在先を探すことは無理だ」としており、民間施設への協力依頼も含め、一時滞在先を早急に確保することにしている。
脱北者の家族4人が小型船で青森県に着いて県警に保護された問題で、小型船のエンジンに海水を直接注入して冷やす仕掛けがしてあったことが分かった。真水でないとエンジントラブルの原因となるため、日本では通常考えられないといい、船を見た漁業関係者は「数日もてばいいというつもりで北朝鮮を出て来たのかもしれない」と話している。
関係者によると、船には予備とみられるもう1台のエンジンもあったが、2台とも数馬力しか出ないタイプだった。船は木造で、長さ7.3メートル、幅1.8メートル。エンジンで航行するなら、10馬力はないと無理という。
船には櫓(ろ)も積んでおり、最初に同県深浦町の風合瀬(かそせ)漁港で小型船を目撃した遊漁船の客らは、「櫓(ろ)をこいで近づいて来た」と話している。4人は県警の事情聴取に「(海上で)悪天候の時は話も出来ず、ただ船にしがみついていた」と話しており、小型船は実際にはエンジンがほとんど役に立たない状態で青森沖まで来た可能性があるという。
青森県深浦町の漁港に小型船で入港した脱北者男女4人が、青森県警に対し「保護を求める。韓国に行きたい」などとした上申書を提出していたことが4日、分かった。県警は上申書に基づき、今後の対応を検討する方針。
県警によると、上申書はハングル文字で、4人それぞれが3日までに書いた。
また4人は事情聴取に対し、出国後の状況について「兄弟が交代で船を操縦したが、天候が悪く揺れたため、父母は気分が悪くなった。波が高く浸水し、手分けして海水をくみ出した」と供述。船内にはハンカチとスカーフ、手袋があったことも判明した。
青森県深浦町で保護された脱北者家族の所持品に、結晶粉末状の微量の覚せい剤があったことが4日、警察当局の調べで分かった。
タコ漁をして家族の生計を支えていた20代後半の弟が「自分で使うために持っていた」と説明しているという。警察当局は脱北の経緯についての調べと並行して、弟から覚せい剤取締法違反(所持)容疑で入手先などについて事情を聞く。
警察当局は、脱北者であることから密売目的で持ち込んだとは考えられず、逃走の恐れもないことから強制捜査には踏み切らず、覚せい剤取締法違反(所持)容疑で書類送検する方向で検察庁などと協議している。
警察当局は、生活の困窮ぶりを訴える一方で、弟が覚せい剤を入手できる立場にあったことにも注目。弟の船に、北朝鮮の漁師では通常、手に入りにくいとされるエンジンが付いていた点とも併せて事情を聞く。
青森県深浦町で保護された脱北者家族4人の所持品から、微量の覚せい剤が検出されていたことが警察当局の調べで分かった。持っていたのは20歳代後半の次男とされ、調べに「船で眠らないように持っていた」などと説明しているという。密売目的ではないとされるが、警察当局は、覚せい剤取締法違反(所持)容疑で調べており、韓国行きを希望する4人の処遇に影響が出てくる可能性がある。
調べでは、覚せい剤は約0.6グラムの粉末で、所持品の中から見つかり、次男が所持していたことを認めた。「北朝鮮では覚せい剤は簡単に手に入る。船で眠くならないように持っていた」などと話しているという。注射器などは見つかっていない。警察当局は4人から尿を採取して、使用の有無についても調べている。
警察庁は北朝鮮が外貨稼ぎのため国家として覚せい剤製造に関与しているとみており、4人が小型船で出港した北朝鮮北東部の清津(チョンジン)港付近を含め国内3カ所に密造工場があるとみている。清津港は過去に日本への密輸事件の積み出し地として使われたこともあり、次男が清津周辺で出回る覚せい剤を入手した可能性もある。
次男は船の操縦資格があり、北朝鮮ではタコ漁で一家の生計を支えていた。これまでの調べに「苦労して船を購入したが、生活は苦しかった」などと話しているという。
韓国が4人を引き取る姿勢を見せたことを受け、政府は警察官職務執行法に基づく保護期限が切れる7日をめどに出国させる方向で調整していたとみられる。法務省も4人が申請した一時庇護(ひご)のための上陸許可を与える方針を固めていたが、次男の覚せい剤所持疑惑が浮上したことで、スケジュールの修正を迫られそうだ。
覚せい剤所持について、警察当局は次男を書類送検する方針を示唆している。仮に書類送検された場合、検察の起訴・不起訴の処分が焦点だ。不起訴(起訴猶予を含む)になれば、その時点で韓国に出国させることが可能となるが、起訴になると公判の結論を待たなくてはならない。いずれにせよ、韓国側が引き取る姿勢を変えないことが前提だ。
また、保護期限の切れる7日以降の4人の保護場所の問題も出てくる。警察庁は「警察が引き続きガードし、警戒することは可能」としているが、警察署以外の適当な施設探しに苦慮している模様だ。
覚せい剤所持発覚を受け、法務省幹部は「4人が人道的取り扱いを受けるべき脱北者であることに変わりはない。日本に身寄りがあるわけではなく、最終的に韓国に移住するのが妥当」として、北朝鮮へ送還する予定はないとの見解を改めて示している。