ハノイの風



食事が終わったら 行こうね 散歩


食事と言っても 点滴のケースから 直接流される

母の胃に。



まだ 車椅子で 自力で 動けるとき

母は 言っていた 病室を 家と



母が 病室を 家 と言うたびに なんと 親不孝なのだろう

自分は と 思っていた。



そして今 栄養の点滴が 食事。



暖かい 日差しを感じたので 散歩に行った

屋上 病院



目を閉ざし 気持ち良さげに 天を仰ぐ 母



風が 母を包む

母が 風と話す。



一日中 毎日 毎日 限られた ベッドという 世界に住む母



健常人には なんということもない 風が

もたらすのだろう 至福の時を。



自然と触れ合う 

これほどに 母を優しく包むのが

自然の力 衝撃だった。



風 ただの風 それが もたらす 母の至福の時。


今からでも 遅くは無い

気づいたときから はじめれば良い

親に尽くす 孝行。


今日の ハノイの風

異国の地にいる 親不孝者に

思い出させる 親の 無償の愛。