「分かっているよ、待っている 真美を待っているから、きっと帰ってくるんだよ。僕の所へ帰って…」



JESUSは 言葉に詰まって、窓の外に目を向けた。

そこには 何も見えては居なかった。

JESUSも 私も、漠然とした不安と、側にいられなくなる孤独感に包まれていた。

又、お互い触れあえば、それらは より強くなってしまう気がして、繋いだ手を 静かに放した…。


「私は これから、JESUSが苦しい時なのに、側に居てあげられないのね。本当に ごめんなさい…」

「僕は…大丈夫、僕も これから暫くの間、真美に 何もしてあげられない。必ず、僕の所へ 帰っておいで…僕は この足を治して、真美の事を待っているから…」


「お願い、これを持っていてね。私の一番大切にしているものなの」

そう言って、彼に 銀細工の家を手渡した。

「これは…?」

JESUSの掌の上で、鈍い色をして 小さな銀の家は、光っている。

「私の心が、中に入っているの」

私が言うと、JESUSは銀の家を掌で包み込み

「分かった、僕が大切に 預かっておくよ」
と 言って、優しく笑った。



「JESUS 検査の時間よ」

マリア・テレサが、談話室に 顔だけ覗かせて、JESUSを呼びに来る。

あの後、彼女は 気を使い、余り私に声をかけなくなった。

お互い 会うと、目で元気な事を知らせ合い、彼女は JESUSと私の時間を 大切にしてくれていた。けれど、今だけは、私が彼女に駆け寄り

「マリア・テレサ JESUSを お願いね!JESUSの力になってあげてね!本当に、ありがとう…」

色の黒い天使は、涙を拭きながら、笑って

「真美、大丈夫、任せて!」

と言って、胸を反らせた。

私は 彼女に抱きついて、「沢山、沢山、ありがとう!本当に…ありがとう」 そう 心を込めて言うのが、精一杯だった。

彼女に会うのも、その日が最後になった。