【知恵のことば】その1

 

 「主が知恵を与え、御口を通して知識と英知を与えられるからだ。」(箴言二章六節)

 

 旧約聖書にダニエルという人物が登場します。ダニエルは、バビロンに捕囚された民として正規の学校教育を受けていませんでした。少年時代から知識とあらゆる文学を悟る力と知恵を神様から与えられ、すべての幻と夢の意味をも解くことができました。知恵と悟りのあらゆる面で、国中のどんな呪法師・呪文師よりも十倍もまさっていました。

 

本当の知恵とは学校で学ぶ教育的知識ではなく、聖霊様が臨まれたとき賜物として与えられる能力です。ダニエルの知恵の秘訣は王様の食べるごちそうやぶどう酒で身を汚すまいと心に定めていた、固い決意と献身です。

 

単に野菜だけを食べれば誰でも頭が良くなるのではなく、大切なのは御言葉に従った生活です。

 

今の時代も私たちの身を汚すこの世の王様の食べるごちそうやぶどう酒が多くあります。それは世の娯楽や遊興、酪酎、淫乱、好色、忌むべき偶像崇拝などです。罪は人を汚し、愚か者にします。

 

親が子供に本当の英才教育を与えたいならば、多くの塾通いではなく聖書の御言葉を学ばせ、罪で身を汚さないよう養育することが大切です。もし不品行や愚かな内容のテレビ番組ばかり見せていると、脳みそが溶けて耳から流れ落ちたような愚か者になってしまうかもしれません。一方、罪を遠ざけ、頭が清いと聡明な優れたアイディアが数多く浮かび、実践者は本当に成功できます。 

 

聖書でソロモンは神の国と義を第一に求め、王様になった時まず第一に礼拝を捧げました。ギブオンで一千頭の全焼のいけにえを捧げた盛大な礼拝の後、夜に主が夢で現われて下さり、仰せられました。

 

「あなたに何を与えようか。願え。」

 

ソロモンは答えました。

 

「善悪を判断して、あなたの民をさばくために聞き分ける心をしもべに与えてください。」

 

神様の選民イスラエルを正しくさばくことは、神様の仕事を忠実に成し遂げることです。今も、神様の仕事の繁栄を常日頃心に留めて第一に求める人は神様が栄えさせます。

 

ソロモン王は自分のために長寿も富も敵のいのちをも求めず、むしろ、正しい訴えを聞き分ける判断力を求めました。神様はそれを喜ばれ、知恵の心・判断する心ばかりか、求めなかった富と誉れも加えて与えられました。

 

ソロモン王はさっそくこの日、神様から戴いた賜物の知恵を用いて複雑な民事訴訟を見事に解決しました。

 

遊女二人が同じ部屋に住んでいて、一人の母親が自分の子供の上に誤って伏せて寝てしまい死亡させてしまいました。その母親は、生きている子供を持つ別の母親の子供と死んだ自分の子供を夜間にすり替えたというのです。法廷でおのおのが、

 

「生きている子供が自分の子供、死んだ子供があなたの子供」

 

と主張する中、他に証人もなく、DNA鑑定も出来ないこの時代にソロモン王は優れた裁定を行いました。

 

「剣をここに持って来なさい!生きている子供を二つに断ち切り、半分をこちらに、半分をそちらに与えなさい!」

 

なんと公平でえらく頭のいいソロモン王様でしょうか!  母親双方が欲しがる一人の子供を正確に半分ずつ真中から平等に分けるよう命じるとは!

こうして事態は一件落着しました。

 

…あ、違いましたね。

 

その時です。本当の生きている子供の母親は、自分の子を哀れに思って胸が熱くなり、王に申し立てました。

 

「わが君。どうか、その生きている子をあの女にあげてください。決してその子を殺さないでください。」

 

一方、もう一人の母親は、こう訴えました。

 

「それを私のものにも、あの女のものにもしないで、断ち切ってください」

 

ソロモン王はここで始めて本当の審判を下しました。

 

「生きている子供を初めの女に与えなさい。決してその子を殺してはならない。彼女がその子の母親なのだ。」

 

神様の知恵がソロモン王をこのような優れた英知ある裁き司として立て上げ、イスラエル国中で名声が高められました。

 

ソロモン王がその後、この同じ知恵の賜物を軍事に用いると、イスラエルは隣国との間で争い無き平和な時代となり、軍事力も最強に強められ、この同じ賜物を貿易に用いると栄華を極めた大富豪となり、さるやクジャクや世界中の珍しい宝物が流れ込みました。

年間六百六十六タラントもの金が入り、銀さえ価値あるものとはみなされず、杉の木は低地のいちじく桑の木のように大量に用いて壮大な王宮と神殿を見事に建築したというのです。

 

世界中の知者たちがソロモン王の謁見を求めて財宝を手に集まりました。シェバの女王は、ソロモン王の知恵と宮殿と料理と列席の家来たち従者たちの態度・服装や礼拝のスケールなど、すべてに圧倒されて息も止まるばかりでした。

 

これら極められた栄華の本当の目的とは、

神様がソロモン王の繁栄を通じて将来、読者の皆様が戴かなければならない天国がどんなに偉大で美しく英知に富んだ最高の場所であるかを、事前に地上で啓示して希望を持たせるためだったのです。

さらにこの時代、偶像の神々ではなくイスラエルの「唯一ひとりの神様」という正しい教理と信仰は、ソロモン王が海に持つ各種の船団により全世界に貿易風とともに宣べ伝えられました。

 

イエス様は「ある人には御霊によって知恵の言葉」を与えておられます。次代の霊的ソロモン王はあなたかもしれません。神様を誰より何より第一に愛して熱心に礼拝を捧げてください。ある人には聖霊様の賜物としてソロモン王同様の繁栄の基である「知恵の言葉」が与えられます。

 【泉パウロ】