MR. FIXIT


先週の一連の騒動を見て、ポールソン米財務長官の辣腕ぶりには改めて驚愕しました。つい最近まで公的資金注入は極力しないと明言していたポールソン長官。一転、8月20日に公的資金(最大7000億ドル)による不良資産買い取り案を議会に提示し、今週はFRB議長と協力して議会の説得に奔走する予定です。先週の速い展開を見るに、ポールソン長官はかなり早い段階から公的資金注入の実施を考え、機会を窺っていたのでしょう。


7月15日のGSE支援策を巡る議会証言の場で、ポールソン長官は「バズーカ砲を持っていることを周囲の人が知っていれば、おそらく使わなくてすむ」と議会を説得しました。公的資金による資本注入のスキームを導入するだけで、実際には資本注入を行わないという意思を感じさせるものでした。当時、公的資金を使った特定の金融機関の救済は国民のコンセンサスを得ていたわけではなく、身内の共和党議員の中にも反対する者が多かったと聞きます。何で最近まで高給をもらっていた金融業界の人々を国民の税金で救済しなくてはならないのか?いつ最近までその風潮に変化はなかったと思います。


しかし、リーマン・ブラザーズを破綻させることで、公的資金注入への反対を一時的に沈静化させることに成功したようです。リーマン破綻の発表直後、金融市場は完全にパニックに陥り、NY株式相場は大恐慌以来の下げ幅を記録しました。クリントン元大統領もCNBCのインタビューに「リーマンを破綻させたことは間違いだ。リーマン破綻は国民全員に影響する」とコメント。リーマンと取引の多かったアル・ゴア氏の投資会社を引き合いに出し、変に勘ぐるコメンテーターもいました。


今回の金融危機には公的資金の注入が不可欠でしょう。ただ大統領選挙の年なので、実施するのは難しいとも感じていました。ポールソン長官(共和党)はこの時期にどうしても大規模な公的資金注入を実施したかったのではないでしょうか。選挙直前に金融市場がパニックのような状態にあると、共和党候補マケイン氏への影響は避けられません。今が注入を発表するデッドラインであり、ポールソン長官はその辣腕で実現させようとしているんでしょう。色々失策も多かったブッシュ大統領ですが、「MR. FIXIT」を財務長官に選んだのは大変な功績ではないでしょうか。