あらすじ
遥か未来、「侵略者」により銀河帝国を崩壊させられた人類は、地球へと閉じこもり、すべてが完全管理され永続する驚異の都市ダイアスパーを建造、ここを永住の地とし、10億年という時間を貪った。
都市の住民は「都市の外」を極度に恐れていたが、成人を迎えた青年アルヴィンは、一千万の都市の人間の中で唯一、未知の世界への憧れを抱いていた。そして、ついに彼が都市の外へ、真実を求める扉を開いたとき、世界は……。
「幼年期の終わり」、「2001年宇宙の旅」等で知られる、20世紀SF界の巨匠アーサー・C・クラークが遺した傑作。
ネタバレ少なめの好き語り
僕として初めて手に取った海外SFということで個人的に思い出深いが、それを抜きにしても、数あるSF文学の中で一番好きなものを一つ挙げるなら僕はこれを選ぶし、SFを読んだことがない誰かに勧めるのにもこれを強く推したい。
あらすじの項で言った通り、大まかな流れはアルヴィンの都市探索、都市の外部探索、宇宙探索の3パートに分かれていて、どんどん話のスケールが大きくなっていく。
アルヴィンは遥か昔の人類が残した痕跡を辿って、より大きな世界を探索していく構成。
僕としては、アルヴィンの教師であるジェセラックが、いろんなほかの作品を含めても一番好きな人物。
少し穿った言い方をすると、アルヴィンは都市の設計者(ヤーラン・ゼイ)によって、生まれる前から「選ばれた人間」だったことが示唆されているから、都市の普通の人が持つ外への恐怖が無いのは半ば当然と考えることもできる。
でも、ジェセラックはアルヴィンの教師であるというだけの一般人で、何か選ばれた素質があるわけじゃなかった。
それでも、遺伝子に刻まれた恐怖に向き合いながら、初めての星空に身を震わせるジェセラックが大好きで、特に感動するようなシーンではないんだけど、読んでいてちょっと泣いてしまった。
時折現れる、無味乾燥とした都市ダイアスパーと対象的な、豊かな情景描写が本当に素晴らしい。
この作品はアルヴィンが行く冒険譚としてよりも、アルヴィンをはじめとする人間たちの情景を見るのが一番楽しめると思う。
古典SFはあまり売れ筋のジャンルじゃないんだけど、これを読んでくれている人が少しでも興味を持ってくれると、一読者としてとても嬉しい。
