あらすじ
国連によって地球を追われ、過酷な環境下の火星や金星の植民地に強制移住させられた人々にとって、意識を埋没させるドラッグ「キャンD」は必需品だった。そんな中、遙かプロキシマ星系から、謎の星間実業家パーマー・エルドリッチが新種のドラッグ「チューZ」を携えて太陽系に帰還した。彼らはこぞってチューZに飛びつくが、幻影に酔いしれる彼らを待っていたのは、死よりも恐るべき陥穽だった……現実崩壊の恐怖を迫真の筆致で描いた、ディック円熟期の傑作長篇。
ネタバレ少なめの好き語り
まず最初に、ディックは難解な作品が多いけれど、これは別格というか、特にカオスな一作。
話の中盤で、キャンD製造の元締めレオ・ビュレロがエルドリッチに捕まってチューZを一度だけ投与されるけれど、それ以降現実と幻覚が入り乱れて、読者目線ですら何が本当で何が虚構なのか分からなくなっていく。
例えるならLSDのバッドトリップを体感しているようで、カオスながらも着実に進む話は脳を混乱させる。
現にディックは一時期薬をやっていた時期があったようで、そのころの体験を多分に強く受けていると思われる。
何が好きなのか説明しろと言われると難しい、というかできないけれど、この読後感はこの作品でしか味わえない。
ハードSFとして中々歯応えがある、SFにハマってきたならおすすめの一本。
