マイティ国語辞典

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言葉の意味を超短編小説で考える

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おどりこ【踊り子】①踊り、特に盆踊りをする少女。〈秋〉②踊りを職業とする女性。ダンサー。


 道が特に曲がってもいない上り坂になって、そろそろ渋公に近づいたと思う頃、生脚が人の密集から白く浮き上がり、適度な早さで宮下公園の方から僕を追ってきた。

 僕は十八歳、ハンティング・キャップをかぶり、紺のジャケットにジーンズをはき、ショルダーバッグを肩にかけていた。一人東京の旅に出てから四日目のことだった。池袋のサウナに一夜泊まり、渋谷のカプセルに二夜泊まり、そして牛革のラバーソールで公園通りを登ってきたのだった。浮かれ立った人々や排気ガスや濃い化粧の女にうんざりしながらも、僕は一つの期待に胸をときめかして道を急いでいるのだった。そのうちに小粒の雨が僕を濡らし始めた。ゆるやかな坂道を駈け登った。ようやく坂上のカフェに辿りついてほっとすると同時に、僕はその入り口で立ちすくんでしまった。余りに期待がみごとに的中してしまったからである。そこで劇場関係者の一行が休んでいたのだ。

 突っ立っている僕を見た踊り子が直ぐに横の椅子の荷物をどかして、自分の膝の上に置いた。……その夜僕は劇場のステージの上で踊子に組み敷かれていた。

こと--は【言の葉】①ことば。②和歌。


 新約聖書「ヨハネによる福音書」第一章第一節に「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。この言は初め神と共にあった。すべてのものはこれによってできた。できたもののうち、一つとしてこれによらないものはなかった。この言に命があった。そしてこの命は人の光であった。光は闇の中に輝いている。そして、闇はこれに勝たなかった」とある。


「初めに言葉ありきという名言があるだろう、なあ福島君」

文壇大御所の溝渕大吾が言った。

「やはり言葉なんだよ、文学やら小説やらというものは。テーマがどうとか言う輩は多いが、何が書かれているかよりどう書かれているかなんだな」

「おっしゃるとおりですね、先生」

編集者の福島がうなずきながら言う。

「近頃の若い作家には、ろくに言葉も知らないで書いている者がいるねえ。結局、言葉、少し広げて言えば文体なんだよ。もっと真摯に言葉と向き合わなきゃだめだ」

「ところで先生、先日いただいた初稿の赤入れをお持ちしました」

「ほう、ご苦労様。特に目立った誤りもなかっただろう」

「百枚の原稿中、二百三十四箇所の赤を入れておりますので、どうかよろしく……」