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V.A. 「THE ESSENTIAL GUIDE TO FOLK」     50th-00th

 広義のフォーク・ミュージックを「ROOTS」「FOLK ROCKS!」「NEW ROUTES」の3枚に
コンピレートして収録したアルバムです。

 DISC-1「ROOTS」では、英国のトラッドをアレンジしたもの、
またビッグ・ビル・ブルーンジーやサニー・テリー&ブラウニー・マギーなどの
米国ブルーズまでを集めています。
ポーグスでお馴染みの「Dirty Old Town」、オリジネイターのイワン・マッコールの
無伴奏ヴァージョン、マーティン・カーシーの「Heartbreak Hotel」、
そしてブルーズ・フィールドではサニー・テリーのハーモニカとブラウニー・マギーの
「Brownie's Blues」などが英米のフォーク・ルーツとして取り上げられています。
面白いのはディヴィー・グレアム&アレクシス・コーナーのギター・デュオの「3/4AD」で、
後世のペンタングルのバート&ジョンほど洗練されてはいませんが、ブルーズをベースにした
ちょっと粗いインストが聴きモノです。また、ピート・シーガーの「花はどこへいった?」の
無伴奏ヴァージョン、これもポリティカルな意図をそれほど感じさせず、いい感じです。

 disc-2「FOLK ROCKS!」では、ボブ・ディランなどを除き、
インクレディブル・ストリングス・バンド、リンディスファーン、イアン・キャンベル、
バート・ヤンシュ、スティーライ・スパン、ニック・ジョーンズ、ペンタングル、
ジューン・テイバー、ラルフ・マクテル、リンダ・トンプスンなど、
60年代後半から70年代までを席巻した面子がずらっと名を連ねます。
このDISC-2は、エレクトリックなフォーク・サウンドを集めたものではなく、
トラディショナルなものをバンド編成(必ずしもエレクトリックとは限らない)で表現したものを
集めたもので、英国勢の中で唯一ディランが米国人で取り上げられています。それも
ロック的なアプローチのハシリのアルバム「BRINGING IT ALL BACK HOME」から
比較的フォーキーな味付けの「It's All Over Now Baby Blue」が収録されているところも
どこか皮肉に思えません?

 DISC-3「NEW ROOTS」では、新世代のフォーク・ミュージシャンの曲が
コンパイルされています。フォークといっても、もちろんブリティッシュ・トラッドに
根ざしたナンバーばかりです。ワタシにはほとんど馴染みのない名前ばかりで、
バート・ヤンシュのアルバム「BLACK SWAN」に収録されていたベス・オートンを
フィーチャーしたナンバーくらいかな、ワタシの知ってるのは。
あ、それともうひとつ、スピアーズ&ボーデンというユニットがトム・ウェイツの
「Innocent When You Dream」をカヴァーしています。これが、オルガンぽいキーボードと
フィドルをフィーチャーしたアレンジで、トムの曲の美しさを最大限に表現しようと
しています。もうひとつ面白いのは、サルサ・ケルティカの「蛍の光」で、
お馴染みのスコットランド民謡を、前半はスコティッシュに、そして後半はキューバン・リズムで
プレイする妙なバンドです。

 約50年のスパンをコンパイルしたこの3CDセット、3つの切り口から選曲され、
いろんなスタイルのブリティッシュ・トラッドを知るに最適のアルバムだと思います。
ますます、ボブ・ディランの1曲がミステリアスに思えてなりません。