『ロックし、スィングし、ロールするこれらの歌は、ぼくのもっとも初期の、
ゆったりとした気楽で折衷的な音楽への回帰である。・・・ブルース・スプリングスティーン』
97年、ピート・シーガーへのトリビュート・アルバムに参加したことがきっかけで、
その時のメンバーを集め自宅で再録したものです。
フォーク・ミュージックの大御所ピート・シーガーがレパートリーとしていた
伝承歌やトラッドが集められています。
よって、ボス・ファンにはオリジナル曲を含まない異色の作品ということになりそうです。
アイルランド物あり、黒人霊歌あり、讃美歌ありで、
特別ボスのファンでもない私にも素晴らしい内容でした。
バンドもフィドルやバンジョー・アコギなどアコースティックな編成で、
ブラスも効果的に配されています。(ドラムスがちょっとうるさいような気もしますが)
労働者や黒人、難民などの社会的弱者の立場で歌われた歌が多く、
プロテスト的な内容で公民権運動などの映画シーンでよく使われる「We Shall Overcome」も
元は讃美歌だそうで、ここでのボスは「闘争」とか「運動」を想わせるような歌い方ではなく
優しく歌われています。
アメリカ開拓時代のホームシック・ソング「Shenandoah」でのバンジョーとフィドルの
哀愁を帯びた伴奏は夢破れた開拓者の心情にぴったりのサウンドです。
ピートが歌を通して伝えてきたことをボスが引き継いで
、次の世代に伝える役割を果たしてくれそうです。