「くっくっく・・・。兄弟愛とは感動ものだな・・・。」倒れていた盗賊の1人が傷を抑えながら立ち上がって近づいてくる。マイルス達は武器を構えた。
「まだ動けるとは、盗賊もなかなかやるんですね。」マイルスは警戒しながら相手に話しかけた。倒れていればいいものをわざわざ立ち向かってくるとは何かあるのだろう、そう思ったのだ。アイアスもそれを感じ取ったのかしばらく様子をみている。
「・・・邪魔がはいったせいでこっち失敗したが・・・くく、まだ俺たちの目的は終わってないのさ・・・。良いことを教えてやる・・・、これはあの時の復讐だ!デュランダルとバスタードが手を組み・・・銀狼を半壊させたときのなぁ。」そう叫び盗賊は高らかに笑いだした。”あの時”・・・、マイルスはそれを鮮明に覚えていた。まだ両家の跡継ぎがアイアスやメルに移る前、当時着実に力をつけていた盗賊団をつぶすためにある作戦が行われた。それの指揮がデュランダルとバスタード家だったのだ。あまり両家の交流はなかったが作戦はうまくいくものだと誰もが思っていた、しかし盗賊のリーダーはその”スパイを使った作戦”を見破り、壊滅という事態を避けたと聞いていた。
「なるほど、だからスパイを・・・。」マイルスは敵を睨みつけながら言った。
「俺たち盗賊は仲間を第一に考える・・・、いくら悪に染まろうがそれだけは変わらない。だから急いだ方がいいぞ・・・セルビナへな。バスタードへの復讐は海の上で決行される、誰にも邪魔はできない・・・。」盗賊はその場で膝をつき、すでに虫の息だ。
「なぜそれをこちらに教える?答えたくないならいいがな。」アイアスは問いかけた。
「あの日以来リーダーは変わっちまった・・・。この復讐にも嫌々参加した奴が多いんだ。盗賊ってのは自由を求める奴らばかりだからな・・・。メルって子を助けたければついででいい、リーダーを止めてくれ・・・。」そう言うと盗賊は倒れたまま動かなくなった。
「さぁ、早くしないと・・・、メルさんが!」マイルスは武器をしまい急いでセルビナへ向かおうとした。ここからではどう足掻いても丸1日以上かかってしまう。どうすれば・・・、そんな時アイアスがふっと笑った。
「ピンチの時こそ冷静でいろ・・・、笑ってチャンスを掴み取れ。数年前あんたが俺に言った言葉だ。そろそろ来る頃だ・・・。」するとジャグナー森林の方から足音のようなものが響いてきた。そしてマイルス達の前に黒いチョコボが姿を現した。「デストリア種の力とコーサー種の速さを兼ね備える俺の相棒だ。部下に町に戻ったらこいつを呼ぶように言っておいた。今の俺ではメル嬢の力にはなれない。行ってくれないか、兄貴。」マイルスはうなずくとすぐに飛び乗った。
マイルスを乗せて走る黒き翼はまるで地上を超低空で飛んでいるかのようなスピードで風を切り進んだ。乗り慣れていない彼にはしがみつくのが精一杯で、ジャグナーやラテーヌの空から降る雨が横に落ちている様を驚く余裕もなかった。あっというまに森林を抜け、”ホラの岩”を後ろに見て砂丘へ入った。チョコボは頭が良くアイアスの「セルビナまで」という言葉だけで目的地まで迷うことなく到着した。
町に入ったマイルスはチョコボから降り、辺りを駆け回った。しかし港には不審な船はなく漁師もだいぶ前にマウラ方面に船がでたのを見たというだけだった。しだいに焦りがではじめ、悔しさに膝を折ってしまった。その時、
「あんたは・・・マイルス!マイルスじゃないか!ズィーハさん!マイルスですよ!」目の前で覚えのある声と名前が聞こえてきた。顔をあげるとそこには海猫党のアズナーフとその後ろにズィーハとムティーブの姿が見えた。
「皇国じゃないからって大きな声を出すんじゃない。久しいね、マイルス。」ズィーハは軽く笑みをこぼした。「やはりコルセアの道を進んだみたいだね。どうしたんだい、こんなところで。」
「実は・・・。」マイルスは自分のおかれている状況を口早に伝えた。メルの事、弟に頼まれた事、そして絶対に助けたいという意志を。それを真剣に聞いていたムティーブが口を開いた。
「ズィーハさん、マイルスさんに手をかしてあげてくれませんか・・・?自分には彼に恩があります。測深儀を見つけるのも自分が責任をもっ・・・!」そう言いかけた彼をズィーハが止めた。
「仕方がない。あらたなコルセア誕生の祝いだ。手をかすからにはその後にこっちの目的も手伝ってもらうよ!さぁ、出航しようじゃないか。」
わずかな手がかりと4人を乗せて、海猫の船はセルビナを出発する。