報道を見ていても,「マイクロシーベルト」「10万カウント」「ヨウ素131」などの専門用語が飛び交い,何を話しているのかまったく分からないと思います.ここでは,これから書く記事の内容を理解するために必要となる用語について,簡潔に解説を試みます.
被ばく
被ばくとは,人体が放射線を浴びることを差します.報道で,作業員や避難住民が「被ばくした」と伝えているのは,被ばく量を放射線測定器
で測定可能な量以上の放射線を浴びた場合です.しかし実際には,すべての人(ヒトに限らず生き物すべてですが)は自然界に存在する放射性物質から出た放射線を浴びています.この点では,すべての人は「被ばくしている」ということもできます.このあとで説明するように,浴びた放射線の量によって「被ばく」には色々なレベルがあるので,単に「被ばくした」というだけでは,どれくらいの量の放射線を浴びたのかは分かりません.当然,医療チームは被ばくした人の「被ばく量」を調べ,健康への影響がどの程度あるかを分析します.
被ばく線量
被ばく線量とは,どれくらいの放射線を人体が浴びたか,その量を表したものです.一般的には,シーベルトSvという単位が使われます(後述).被ばく線量は,「どれくらいの強さの放射線に」,「どの程度の時間さらされたか」によって決まります.弱い放射線に長くさらされるのも,強い放射線に短くさらされるのも,まとめて「被ばく線量」として扱うことができます*3.また,全身に放射線を浴びた場合だけでなく,臓器や組織ごとに分けて,被ばく線量を分割して考えることもあります.例えば,外部被ばくの場合,皮ふや眼の水晶体が被ばくを受けやすくなります.また内部被ばくの場合は,取り込んだ放射性物質がどの臓器に集まりやすいかによって,臓器ごとに分けた被ばくの影響を考えます. 放射線測定器
吸収線量-グレイGyと実効線量-シーベルトSv
放射線量を表す単位にはGyグレイとSvシーベルトがあります.物理的に測定されるものが吸収線量:Gy*4,Gyで表された吸収線量に,人体への影響を加味した重み付け(放射線荷重係数;同じエネルギーを受けても,放射線の種類によって影響の度合いが異なる)をしたものが等価線量です.さらに,同じ量の放射線を浴びても影響は臓器ごとに異なります(生殖腺や骨髄は被ばくに弱く,皮ふや骨は強いetc...).浴びた放射線の等価線量を,組織・臓器ごとに分けて重み付けし(組織荷重係数),その後それらを合算した値を実効線量と呼びます *5.単位はSvです.実効線量は,実際に正確な値を求めるのが難しい(すべての組織・臓器にガイガーカウンター
を付けるわけにはいかない)ので,測定可能な実用量(実効線量に近くなるよう補正された測定値)で代替されます.説明が長くなりましたが,被ばく線量を考える時には,最後の「実効線量」に注目する必要があります.様々な測定地点で測定される放射線量も,実効線量に換算したものとなっています.高線量の被ばくを考える場合は,被ばく線量を実効線量Svではなく,吸収線量Gyで基準づけて評価します.低線量被ばくによる確率的影響を考える場合は実効線量Svを用います.ただし,資料によっては,高線量被ばくについての記述でもGyやSvが混在していることもあるので,注意が必要です.