海外旅行から帰ってくると、「このあいだ○○に行ってきてさー」などとつい話題に出したくなるのは、ヒトとして当然の心理だと思うのであります。
多くの場合、その話の中には「ちょっとした武勇伝」が挟まれていたりして、なかなかに興味深いのでありますね。
さほど大きな出来事ではなく、「税関でモメた」とか「屋台で思い切り値切ってやった」とか、そんな程度なのですが。
かなり前のこと。
友人の一人が新婚旅行でヨーロッパ一周をしてきたのです。
ワタクシは人から海外の話を聞くのがわりと好きなので、その後に行われた飲み会の席で彼をつかまえ、いろいろと尋ねてみました。
「で、ヨーロップはどーだった?どんな匂いがした?食事は?」
しかし期待に反し、彼が言うのは「毎日毎日移動だったから疲れた」とか「食べ物はよくわからないけど、大しておいしくなかった」とか。
「なんだ、ツマンネーなぁ」と落胆しかけたのですが、どうやら彼にはそんなことよりも語りたいエピソードがあったよう。
「ドイツだったかな。夜にやたらとノドが渇いてさ」
お、なんだ、ちゃんと面白そうなネタ仕込んでるじゃん。
「ほうほう、それで?」
「ホテルの近くにコンビニみたいな店があったのを思い出して」
「うんうん」
「カミさんはもう寝てたんで、オレ一人で水を買いに出ることにしたんだ」
「なるほど」
「夜だったし、言葉は分かんないし、ちょっと怖かったなー」
驚くなかれ、なんと話はそれだけ。
え、オチは?オチはどこ?
「あ、そーいうことか」と、ようやく分かったのは翌日になってから。
つまり、こういうことなのです。
「見知らぬ外国のコンビニだぜ。しかも夜だぜ。そこでたった一人で買い物したんだぜ。どーだ、オレってスゲーだろ」
ああ、武勇伝だったのね。
武勇伝、ぶゆーでん、ぶゆうデンデンデデンデン♪
古いねどうも…。
(太之輔)